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 最近、ある事実に気がついた。ベンチャー企業が育たないという日本でも、平成の時代には数多くのベンチャー企業が誕生し、中には大企業にまで成長した企業も存在する。しかし、平成生まれで世界に飛躍した企業があっただろうか。「どこかにあるだろう」と思って探してみたけど、私には見つけることができなかった。

 もちろん世界に飛躍した企業、つまりグローバル企業の定義にもよる。Preferred Networksのように一部では技術に特化して世界から注目される企業もあるが、広く誰もが「平成生まれのグローバル企業」と認定できるような存在は見当たらなかった。おいおい、平成はおよそ30年間も続いたのだぞ。令和の時代になった今でも、日本のグローバル企業と言えばトヨタ自動車、ホンダ、ソニー、任天堂をはじめとする「明治・大正・昭和な会社」ばかりだ。

 平成生まれの出世頭と言えば、今や「和製プラットフォーマー」となった楽天だが、グローバル展開に成功したとは言いがたい。メルカリなど後に続くベンチャー企業も海外市場に挑戦しているが、その壁は高い。「そうだ、ソフトバンクは?」と一瞬思ったが、由緒正しき昭和生まれ。それに今や事業会社というよりも投資会社だ。

 この恐るべき事実に気付かされたのは、ある投資家の冷たい一言だ。「日本のベンチャー企業はすぐに先が見える。どんなに成功した企業であっても、日本市場をあらかた取ったらそれでおしまい。株の売り時だ。米国など外国の企業なら国内市場だけでなく世界市場があるから、株を保有し続けたり買い増したりする価値はあるのだが」。

 そう言えば、米国のGAFAのうちApple(アップル)を除けば皆、平成生まれだ。Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)が平成6年(1994年)、Google(グーグル)は平成10年(1998年)、Facebook(フェイスブック)は平成16年(2004年)の設立だ。もちろん、その後もNetflix(ネットフリックス)やUber Technologies(ウーバーテクノロジーズ)、Tesla(テスラ)など平成生まれの企業が続々と誕生し、グローバル市場を支配するプラットフォーマー、あるいは世界の既存産業を破壊するディスラプター(破壊者)として成長していった。

 中国では急速にグローバル化しつつある騰訊控股(テンセント)が平成10年(1998年)、アリババ集団が平成11年(1999年)に設立されている。ちなみに米中経済摩擦の焦点となった華為技術(ファーウェイ)は昭和62年(1987年)で、わずかな差で平成生まれではない。ただ平成時代の30年間で、米国の経済覇権を揺るがすようなグローバル企業に駆け上がった。

 平成生まれを他の国でも探せば、東南アジアではシンガポールのGrab(グラブ)、インドネシアのGojek(ゴジェック)が配車のシェアリングエコノミーの世界でブイブイ言わせている。スウェーデンのSpotify Technology(スポティファイ・テクノロジー)は音楽配信サービスでグローバル企業に成長した。そう言えば本社を英国からシンガポールに移転したDyson(ダイソン)も平成生まれだな。探せば他にもたくさんあるだろう。