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 いかん、どうしても失笑してしまう。何の話かと言うと「経団連と経済同友会、日本商工会議所の経済3団体のトップらが首相官邸で菅義偉首相と面会し、行政のデジタル化などを含め経済改革を押し進めるよう要請した」との報道に対してだ。感想を素直に言葉にすれば「どの口が言っとんねん!」である。

 いやぁ、いくら「極言暴論」であっても、経済界の重鎮たちに向かってそんな言葉を投げつけるのは、いくら何でも失礼極まりない。そもそも菅首相への要請の内容は至ってまっとうだ。報道によれば、経団連は「政府が創設を検討しているデジタル庁を巡り、他省庁に指示できる強い権限を持たせるよう求めた」という。全くもってアグリーだ。行政のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するには、省庁を横串にする強い権限が不可欠だからだ。

 ちなみに経済3団体は、菅内閣が発足した際にそれぞれ新政権への提言をまとめている。ちょっとのぞいてみると、例えば経団連は「国・地方を通じたデジタル政策を一元的に企画立案する内閣デジタル局(仮称)を内閣官房に設置するとともに、中央省庁システムおよび地方公共団体に提供するシステムの企画立案・開発等を一元的に行うデジタル庁(仮称)を内閣府に設置することが有効」とする。経済同友会も「広範な権限を持つデジタル政策司令塔の設置」を提言している。

 全面的におっしゃる通りである。さすが日本を代表する企業や功成り名を遂げた経営者が集まる経済団体だけのことはある……。皮肉はここまでにしよう。行政のDXに向けた提言は当然、経済団体に集う経営者らが長きにわたって経営してきた企業にも当てはまるものだ。もちろん行政機関と企業では組織形態などが異なるので全く同じというわけではないが、DXを推進するためにやるべきことは、官であろうが民であろうが本質的には変わらない。

 だからこそ前回の「極言暴論」では、行政のDXがどれほど困難なプロジェクトであるかをイメージできるように、日本政府、国の行政機関を「日本行政サービス」という超巨大企業に例えてみたのだ。誇張ではなく本当に同じだぞ。例えば「他省庁に指示できる強い権限を(デジタル庁に)持たせる」を「事業部門やグループ会社に指示できる強い権限をIT部門、あるいはDX推進組織に持たせる」と言い換えてみるとよい。

 で、功成り名を遂げた経営者は、自らが経営してきた企業のDXに成功した、あるいは成功しつつあるのだろうか。そんなことはあるまい。日本が「IT後進国」「デジタル後進国」に落ちぶれたのは、政府の責任もあるが、各企業のIT投資、デジタル投資があまりにもアホだったことのほうが大きい。特に大企業の経営者の責任は重い。だから冒頭で書いたように、思わず失笑し、「どの口が言っとんねん!」と言いたくもなるわけだ。