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 岸田文雄新政権が誕生し、私が以前から「これじゃ駄目でしょ」と言ってきた問題の1つが解消した。何の話かと言うと、前政権では行政のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するはずなのに、なぜかデジタル大臣には平井卓也氏、行政改革担当大臣には河野太郎氏という2人の担当大臣がいた問題だ。それが岸田内閣では、牧島かれん衆院議員に一元化された。まずはめでたしめでたし、と言えるかもしれない。

 牧島デジタル相は行政改革担当、そして規制改革担当の大臣を兼務する。とりあえず、これが正しい。この「極言暴論」などで何度も言っている通り、DXとは「デジタルを活用したビジネス構造の変革」であり、行政版にカスタマイズして言えば「デジタルを活用した行政改革」が行政のDXだからだ。にもかかわらず、デジタル大臣と行政改革担当大臣(それに規制改革担当大臣)が別人というのは、ちゃんちゃらおかしいのだ。

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 ただし、である。冒頭で「まずはめでたしめでたし」などと書いたが、本当はまだめでたくない。デジタル大臣と行政改革担当大臣などを1人の政治家が兼務するといっても、デジタル大臣や行政改革担当大臣などの役職が統合されるわけではなく、そのまま残る。当然、それぞれの役職を支える官僚組織(デジタル大臣ならデジタル庁)や担当スタッフも別々のままだろう。何のことはない。行政のDXと行政改革は依然として別概念のままなのだ。

 今回の極言暴論のテーマは、行政のDXやデジタル庁に特化していいがかりをつけることではないので、デジタル庁や新大臣にこれ以上あれこれ言うつもりはない……。いや、牧島大臣には一言だけ文句をつけておこう。初の記者会見では「デジタル庁をショーケースに」なんて「緩い話」ではなく、もっと政策を語ってほしかったぞ。新大臣の発言には、デジタル庁の職員だけでなく、デジタル庁の「介入」を警戒する他省庁、それに地方自治体、出入りのSIerの関係者が耳をそばだてていたのだからな。

 それはともかく、先ほどの「行政のDXと行政改革は依然として別概念」の件で、私が「けしからん」と言うと、かなりの確率で「DXに全ての変革が包含できるわけではないから、行政のDXと行政改革が別々になっていても、それほど大きな問題ではないでしょ」といった反論を受ける。別に政治家や官僚が文句を言ってくるわけではない。これは民間企業のCIO(最高情報責任者)やIT関係者などの反応だ。彼ら/彼女らも「行政のDXと行政改革は別概念」でも違和感がないわけだ。

 で、「何でだろ?」とちょっと考えたが、考えるまでもなかった。理由は単純だ。要は、企業でもDXと事業の構造改革などが別概念のケースが結構あるのだ。もちろん、担当役員もそれぞれで別だ。もう一度書くが、DXとは「デジタルを活用したビジネス(事業)構造の変革」だ。なのに、DXと事業の構造改革が別概念で担当役員が別にいても、その企業では矛盾を感じない。そうした企業の社員は当然、行政のDXと行政改革が別概念で、それぞれに担当大臣がいたとしても、不思議に思わないのである。