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 世の中の職業をこんなふうに2つに分けてみる。1つは基本的に「この仕事をやりたかった」という人だけで担われている職業。もう1つは「この仕事をやりたかった」という人だけでなく、「仕方なく」「たまたま」という人も数多く流入してくる職業だ。前者の典型は、例えばプロ野球選手だ。実際に「仕方なく」「たまたま」選手になった人は皆無だろう。

 プロ野球選手なんて例に出すと、「この仕事をやりたかった」という人だけの職業は極めて特殊な印象になるが、実際はそうでもない。その仕事をやりたいと思うならそれなりの能力や適性、努力が必要で、その仕事に就いた後もレベルアップを目指して常に研さんを積む必要がある職業であるなら、全て含まれる。もちろん、なかには「仕方なく」「たまたま」その仕事に就いたという人もいるかもしれないが、あくまでもレアケースのはずだ。

 プログラマーも本来「この仕事をやりたかった」という人たちが就く職業である。米国のGAFA、あるいはシリコンバレーのスタートアップなどで働くプログラマーは、誰もがそんな人たちなのだろう。つまり憧れの職業であり、才能にあふれた優秀な人たちが集まる。しかも彼ら彼女らが生み出すソフトウエアは、社会にイノベーションを引き起こし、世界を変える力がある。「この仕事をやりたかった」という多数のプログラマーの存在は、米国にとって強い競争力の源になっているわけだ。

 そういえば、日本でも小学生や中学生、高校生にとってプログラマーは憧れの職業だ。小学校でプログラミング教育が必修化されたこともあり、プログラミングの才能を開花させた次世代の人材が育っていけば、日本の将来に多少の明かりも見えてくるというものだ。ところが、である。この「極言暴論」の読者なら既にお分かりかと思うが、日本の場合、プログラマーという職業は「この仕事をやりたかった」という人たちだけが担っているわけではない。つまり、必ずしも憧れの職業ではないのだ。

 なぜそんなことになるかは言うまでもない。日本のIT業界は人月商売の比率が高く、世界に類を見ない多重下請け構造があるからだ。この人月商売では「大手金融機関で○○システムの××の構築経験あり」といった経歴をでっち上げて、素人同然の人をシステム開発などの現場に送り込んでいるので、はっきり言ってしまえば「誰でもプログラマーになれる」。そんな訳なので、日本のIT業界(だけ)は、「この仕事をやりたかった」人よりも「仕方なく」「たまたま」という人が多数派を占める。

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 おっと、このまま書き進めると、プログラマーに憧れる子供たちや若者たちをミスリードして、夢を壊す恐れがあるな。もう少し詳しく言えば、日本のIT業界は基本的に「この仕事をやりたかった」というプログラマーらで構成されるIT業界(スタートアップなどの世界)と、「この仕事をやりたかった」人よりも「仕方なく」「たまたま」という人がはるかに多いIT業界(人月商売の世界)の2つに分かれる。まるでパラレルワールド状態だ。2つの並行世界のうち、足を踏み込む先さえ間違わなければ大丈夫だから安心してくれ。