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 「入社2年目の若手にあんな仕事をさせてよいのかね。彼の将来が心配になったよ」。大手製造業でCIO(最高情報責任者)を務めた人が半分あきれ顔でそんな話を聞かせてくれたことがある。何の話かと言うと、あまりに衝撃的だったので既にこの「極言暴論」で何度か紹介しているネタだ。

 この元CIOはリタイア後に、以前から親交のあった大企業のIT部門に招かれ、「IT担当者の心得」といったテーマで講演したそうだ。そして講演後に開かれた懇親の席での出来事が冒頭の話だ。新卒入社で2年目という若手に「君はどんな仕事をしているの」と聞いたら、「はい、ベンダーマネジメントです」との元気の良い返事が戻ってきたとのこと。

 「あり得ないだろ」と元CIOは私に言った。「はい、あり得ませんね」と私。「俺、腰を抜かしそうになったよ」と元CIOは続けたが、私もその話を聞いて腰を抜かしそうになった。IT部門の劣化ここに極まれり。まさにそんな話だ。

 何度か紹介しているネタとは、ここまでの話だ。極言暴論の熱心な読者の中には「またその話か。木村もそろそろネタ切れだな」と思う人がいるかもしれない。だがつい最近、このネタがバージョンアップしてしまった。ある大企業のIT部門のマネジャーにこの話をして「ね、驚くでしょう」と言ったら、そのマネジャーに「そんなの当たり前でしょう。うちでも若手にやらせていますよ」と不思議がられてしまったのだ。

 うーむ。どうやら最近、世間ではITベンダーに対する窓口係をベンダーマネジメント担当と呼ぶらしい。私の理解では、システム開発などのプロジェクトにおいて中核的な役割がベンダーマネジメントだ。外注によって業務をこなすことが基本のIT部門においては「ベンダーマネジメント=プロジェクトマネジメント」といっても過言ではない。であれば、入社2年目の若手に務まるはずがない。

 だが考えてみれば、大企業といえども今やシステム開発案件はほとんど無い。IT部門の日常はシステム運用業務が基本で、不定期に保守業務が発生するのみだ。もちろん保守は規模の小さな開発なのだが、その程度の業務なら運用も含めてITベンダーの常駐技術者に丸投げしておけばよい。そんな状況なので、新卒に近い若手にベンダーマネジメントという「大役」をアサインしても平気なのだろう。

 しかし「マネジメント」だぞ。いったいITベンダーの何を「管理」するのだろう。入社してそれほど時間もたっていないのなら、自社の業務もシステムの中身もほとんど分からないはずだ。完璧に丸投げするしかないが……。あっ、あれか。ITベンダーの技術者が「ホント勘弁しろよ」と怒る例のやつだな。ITベンダーが上げた進捗報告書などのExcelシートを見て「フォントが違うじゃないか」と差し戻す仕事が、ベンダーマネジメントの中身に違いない。