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 最近、久しぶりにリアルの会場で講演してきた。新型コロナウイルス禍が猛威を振るっていたときは、セミナーでの講演というとZoomなどを使ったウェビナー形式ばかり。今回も完全なリアルとはいかず、ウェビナーとのハイブリッド形式だったが、聴講者が目の前にいるとアイコンタクトなどができるため、やはり話しやすい。ただなぁ、実はアウェー感たっぷりの講演だった。

 何せこのイベント「横浜ITフォーラム」の主催者は神奈川県情報サービス産業協会(神情協)と横浜市。いつもこの「極言暴論」などで「人月商売のITベンダー、滅ぶべし」とか「行政機関は最低最悪の客だ」などと主張しているから、居心地が良いはずがない。聴講者の属性を聞いてみると、なぜか大挙して参加している某大手SIerを除けば、大半は神情協に加盟するITベンダー。要は、人月商売の下請けITベンダーの幹部たちだ。いやぁ、これを完全アウェーといわずとして何という。

 「じゃあ、何で講演依頼を受けたんだ」と突っ込まれそうだが、そりゃ言ってしまえば渡世の義理だ。横浜市の最高情報統括責任者(CIO)補佐監から日経BP関係者経由で依頼を受けたので断るわけにもいかない。講演テーマはご時世柄、やはりDX(デジタルトランスフォーメーション)だったが、神情協の関係者によると「人月商売のITベンダーをメッタ斬りにしてしまってよい」とのこと。「この人たち、マゾかいな」と思ったが、ご要望通りメッタ斬りにすることにした。

 では、どんな話をしたのかと言うと、もちろんこの極言暴論で主張してきたことだ。例えば労働集約型産業である人月商売のITベンダーがいかに駄目か、技術者をいかに「無駄遣い」しているかといったことだ。そして、ユーザー企業などがDXに本気で取り組めば、人月商売のITベンダーは用済みになることや、特に下請けのITベンダーからユーザー企業へと、手を動かせる技術者の大移動が始まっていることなどを「暴論」してきた。

 そうしたら、会場は盛り上がったね。「やはり、この人たちはマゾだな」と思ったのだが、こんな質問というか意見も出た。「日本のIT業界を労働集約型と否定するが、立派な知識集約型産業だ」。どうしてそんな認識を持てるのかと、かなり驚いた。で、「本当に知的集約型産業だと思うのなら、技術者を十把ひとからげで人月いくらみたいな労働集約型の売り方をするな」と返しておいた。この件は今回の極言暴論の核心ともいえる深い話なので、後でまた触れることにする。

 こう書いてくると、講演で人月商売のITベンダー、特に下請けITベンダーを「滅ぶべし」と完全否定しただけかと思われるかもしれないが、実はそうではない。もちろん極言暴論では常に完全否定しまくるので、そう思われても仕方がない。ただ、これまで極言暴論ではあえて書いてこなかったが、経営者が悔い改めさえすれば、下請けITベンダーがSIerに下克上をできる環境が整いつつある。つまり、SIerを用済みにできるのだ。講演ではその話を伝えた。今回の極言暴論でもその話をしよう。