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 今回の「極言暴論」はこんな例え話から始めよう。おもちゃを片付けようとしない子供に対して、母親が「お片付けしないと、次の遊びができなくなっちゃうよ」と諭す。子供も片付けなければいけないと理解したようで「そうだね、ママ。片付けは大切だね」と答えた。でも、片付けようとしない。そして「だから、ママが片付けてよ」。

 読者の皆さんは自分の周りにこんな子供がいたら、どう思うだろうか。気の短い私なら、たとえ他人の子供であっても「自分でやらんかい!」と言ってしまうかもしれない。だが、実際にはこんな「子供」はいない。物心ついたばかりであっても、それが大切だと納得すれば自ら進んで片付けるものだ。

 何でいきなりこんな例え話を始めたかと言うと、最近見せてもらったDX(デジタルトランスフォーメーション)に関する調査報告書『DXサーベイ』があまりに衝撃的で理解不能だったので、今回はそれをネタに記事を書くことにしたからだ。つまり、この例え話は記事の前振りである。で、登場する「子供」は日本企業の経営者を例えている。小さな子供でも分かることが理解できないアホ社長がこの日本にはごろごろいるから、もう驚きなのだ。

 手前味噌だが、実は日経BPのシンクタンクである日経BP総研がこの調査報告書をまとめたとのことで、数日前に担当者から連絡が来た。「日本企業のDXに関して面白い調査結果が出た」と言う。何でもDXについて一部上場企業など900社から回答を得たそうで、なかなかの力作である。ただし、読んだところで極言暴論のネタとして面白くなければスルーするしかない。そう思ってデータを眺めていて、まさに目が点になった。

DXプロジェクトに関する経営トップの姿勢
DXプロジェクトに関する経営トップの姿勢
「DXプロジェクト(DXを推進するためのプロジェクト)に関する経営トップの姿勢はどれですか」に対する回答結果
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 それがこの図だ。何が驚いたかって「DXプロジェクトに関する経営トップの姿勢」を問うた設問に対して、DXに取り組む企業の41.6%が「(経営者はDXの)重要性を理解しているものの、現場任せ」と回答しているのだ。もうびっくりである。DXの推進は経営者自身の仕事だぞ。それを現場に丸投げしてどうする。これでは冒頭の例え話のように「そうだね、ママ。片付けは大切だね」「だから、ママが片付けてよ」と言う子供と全く同じだ。

 ちなみにDXを推進している企業は全体の3社に1社、36.5%だそうだ。この数字が多いか少ないかは微妙だが、DXに取り組んでいると言っても、現場丸投げのアホな経営者が4割以上もいては話にならない。うーん、これはヤバいぞ。昔はやったBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)やERP(統合基幹業務システム)導入のビッグバンプロジェクトの悪夢が繰り返される気配が濃厚である。