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 少し前のことだが、大手SIerの人がこんな話をしていた。「我々もご用聞き商売をやっていては先がない。GAFAを見習って、きちんとマーケティングをして自らの製品やサービスを提供できるようにならなければ」。その心意気やよし、と言いたいところだが、そのSIerがこれまでたどってきた道のりをよく知っているだけに、「そんなことを言うぐらいのレベルまでに落ちてしまったか」と複雑な気分で聞いていた。

 そのSIerはかつて国産コンピューターメーカーと呼ばれる存在だった。人月商売、ご用聞き商売の親玉であるSIerは、その出自から幾つかにグルーピングできる。1つ目は、設立当初からソフトウエアの受託開発を手掛けてきたITベンダーがSIerへと成長した「人月商売ネーティブ組」。2つ目が、ユーザー企業のシステム子会社がいわゆる外販(実態はソフトウエアの受託開発だが)も手掛けるようになり、SIerへと成長した「システム子会社転身組」だ。

 で、3つ目のグループは、国産コンピューターメーカーがメーカーとして立ち行かなくなった結果、SIerに身をやつした「メーカー落ちぶれ組」。前述の通り、冒頭のSIerはこのメーカー落ちぶれ組だ。もちろん、こうした単純な分類に当てはまらないSIerもある。そういえば、人月商売のIT業界の最大手であるNTTデータは、NTTでデータ通信サービスを手掛けていたデータ通信本部が独立して誕生したから、どのグループでもないな。

 SIerをグルーピングしておきながら、こんなことを言うも恐縮だが、実はSIerを出自でグルーピングする意味はほとんどない。水は低きに流れる、という言葉があるが、まさにSIerがその典型だ。先ほどグルーピングした際に「SIerへと成長した」などと書いたが、あれは嘘である。「SIerへと退化した」とするのが正しい。ITベンダーはSIerに変貌していく過程でそれぞれの特徴を失い、どの会社も皆、人月商売の親玉になった。水は低きに流れ、全てが一番下にたまる、という状態である。

 そういえば、SIerがシステムインテグレーターの略称だと知らなかった若手技術者がいて、ちょっと驚くとともに「確かにそうかもな」と思ったことがある。システムインテグレーターの本来の仕事は、様々なハードウエアやソフトウエアなどを組み合わせて1つのシステムをつくることだ。組み合わせて1つにする(インテグレーションする)から、インテグレーターなのである。だから若手技術者がSIerの「正式名称」を知らなくても、当然と言えば当然なのだ。

 何せ今のSIerの仕事の大半は、システムをインテグレーションする必要がない。サーバーなどのハードウエアはコモディティー化して久しく、どれを選んでも同じだ。OSはWindowsやLinuxなどに限られ、データベースやミドルウエアも定番の組み合わせがある。あとはERP(統合基幹業務システム)などを使うか使わないかにかかわらず、客のご用を聞いてアプリケーションをつくるだけ。つまりSIerはどこも皆、受託ソフトウエア開発の親玉であり、個性や特徴が入る余地などないわけだ。