
「ITオンチ」とか「アナログ人間」という言葉がある。今どきスマートフォンやパソコンを全く使わない人はほとんどいないと思うが、とにかくITが嫌いで会議でも何でも可能な限りアナログ(=リアル)で済ませようとする人を指す。イノベーションや変革の道具としてのITの可能性を理解しようとしない人も同類だ。今の時代、経営者らリーダーがこのタイプだと速やかに退場してもらうしかないが、IT技術者にもITオンチやアナログ人間がたくさんいるから要注意だ。
本題に入る前に、一言述べておきたいことがある。私の記憶が正しければ、アナログ人間とは本来、直感や感覚を重んじ理屈で割り切れないことを否定しないようなタイプの人を指す言葉だったはずだ。その意味では、大学で美術史を専攻していた私なんかも典型的なアナログ人間だ。ところが、パソコンなどを使いたくないがために「私はアナログ人間だからな」と言い訳を述べる「昭和なオヤジ」が続出し、いつの間にかITオンチと同じ意味、つまり「ITやデジタルを分からない人」という意味に変化してしまった。
さて本題だが、ITオンチや(今風の意味での)アナログ人間といわれる人たちは、ITがどうのこうのではなく、時代の変化に合わせて生き方や働き方を変えるのが単に嫌なだけだと思うぞ。たまたま今はデジタル革命の時代で、デジタル技術(=IT)によって社会や経済、仕事などが激変しつつあるから、ITに拒絶反応を示していると理解したほうがよい。もちろん人それぞれなので、変化を嫌いITを嫌っても一向に構わないし、もしそれで不利益を被ったとしても、それこそ自己責任だ。
問題は、こういう人が経営者や部長などの幹部を務めている場合だ。特にITオンチの経営者がいると、その企業はもう悲惨だ。先ほどの話でいえば、ITオンチの経営者は変化を嫌う人ということになる。まさか変化を嫌う経営者がいるとは思いたくないが、お察しの通りというか、多くの読者が身近に接している通り、日本企業には変化を嫌う経営者がたくさんいる。先代経営者から受け継いだやり方を墨守する、そんな「サラリーマン社長根性」が染みついた経営者が大勢いることは、残念ながら事実である。
関連記事 変革を主導する経営者はわずか2割、そんな「サラリーマン社長根性」ではDXは無理もちろん、経営者が「私は変化が嫌いだ」などと口走ったら、本当に経営者失格になってしまう。そんなこともあり、IT部門などが「ITを活用した業務改革」の必要性を提言した際には「私はITを分からない」などと言って、改革から逃げていたのではないかと疑っている。とはいえ最近では、DX(デジタルトランスフォーメーション)が必須の経営課題となったために「ITを分からない」とも言えなくなった。なので「DXに取り組む」とは言う。ただし現場に丸投げで、自らはDXを主導する気はさらさらなかったりする。
おっと、今回は経営者を俎上(そじょう)に載せる記事ではないので、これ以上は展開しない。認識しておいてもらいたいのは、ITオンチやアナログ人間といわれる人は、デジタル革命が進展している状況を直視しようとはせず、変化を嫌って現状に甘んじようとしているという点だ。ここまで書けば、記事冒頭の「技術者にもITオンチやアナログ人間がたくさんいるから要注意」の意味も明らかだろう。