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「俺様のやり方に合わせろ」という役所を何とかしろ

 結局のところ、大企業をはじめとする日本企業が一斉に業務を標準化して全体最適を図り、企業間のやり取りも可能な限り標準化していかなければ、どうにもならないという話論になる。個々の企業の経営者が悔い改めるのより、はるかにハードルが上がるので本当に「そりゃ無理」と言いたくなる。だがねぇ、そこを何とかしないと、デジタル時代に日本の産業はガタガタになるぞ。

 確かに新たなデジタルサービスを生み出すのも大切だが、既存のビジネスや業務の標準化・効率化は大前提として極めて重要なはずだ。そうでないと技術者という希少資源をデジタル分野に振り向けられないし、デジタルサービスの源泉となるデータは企業の独自仕様のシステムに閉じ込められたままで流通や活用が進まない。要は日本の産業全体の最適化がデジタル時代には不可欠になのだ。

 そこまで話が大きくなると、もはや国の政策として考えてもらわないといけない。そう言えば最近すっかり話題にならなくなったが、「ドイツなどに後れを取るな」と騒いでいたインダストリー4.0の取り組みはいったいどうなったのか。IoT(インターネット・オブ・シングズ)やクラウドなどを活用して柔軟な生産体制を作る点にだけ注目が集まっていたが、あれは企業間のデータのやり取りなどを標準化して中堅中小企業が不利益を被らないようにする点も大きな眼目であったはずだ。

 ただしその前に、大企業以上に「俺様のやり方に合わせろ」という役所の仕事を何とかしてもらわないと困る。申請書などの書類は役所ごとに異なる書式を出せと言う。しかも今日に至っても紙での提出を義務付けていたりする。例えば国土交通省はMaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)の推進をぶち上げているが、同省の地方陸運局はバスなどの交通機関に対して路線や時刻表、運賃などを変更するたびに膨大な紙の書類の提出を要求する。

 するとどうなるか。バス事業者らは紙による事務作業を続けざるを得ない。特に地方の中小事業者は事務作業を担う従業員をたくさんは雇えないので、役所向けの書類作成と並行してMaaS用のデータを作成するような手間をかけられない。本来なら役所用の書類に記載するデータもシステムで一元管理すればよいのだが、役所向けの書類が手書きの紙である以上、システム化へのインセンティブは働きにくいのだという。

 それでもまあ、2019年5月に行政手続きを電子化するデジタルファースト法が成立したのだから、少なくとも「紙による書類の提出」問題は解消されていくはず……と信じたいが、依然として疑念が残る。何せ2001年に出されたe-Japan戦略には「2003年までに、国が提供する実質的にすべての行政手続きをインターネット経由で可能とする」と明記していたのに、今もってできていないのだからね。

 いずれにせよ、日本は国、企業、そしてあらゆる組織や個人がデジタルの時代に備えなければならない。「デジタル革命だ」とか「第四次産業革命だ」とか大げさに言うから嘘臭くなるが、今のデジタル化はかつての工業化に匹敵する大きなうねりである点は誰にも分かる。明治政府の強権的な工業化政策はこの時代にはあり得ないが、当時と同じような危機感と覚悟をもって誰もがデジタル化に取り組まないと、日本の衰退は確定する。