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 最近、アジャイル開発とローコード開発に共通の問題があると気づいた。あらかじめ断っておくが、アジャイル開発とローコード開発を一緒くたにして暴論しようというわけではない。あくまで両者は別のものと認識したうえで、「なんちゃってアジャイル開発」と「アカン・ローコード開発」に共通する問題を指摘しようという意図である。

 「共通の問題があると気づいた」などと偉そうに書き始めたが、実は「気づかせてもらった」というほうが正しい。ユーザー企業におけるアジャイル開発の問題点を述べた識者の指摘と、ローコード開発で陥りがちな誤りについて話してくれたCIO(最高情報責任者)の指摘が見事に一致したのだ。

 アジャイル開発における問題点を指摘したのは、日経クロステックのコラム「『ITオンチ経営者』への処方箋」で記事を執筆しているITコーディネータ協会会長の澁谷裕以氏だ。読者からの非難が殺到することもある「極言暴論」の性質上、迷惑をかけてはいけないので、あまり他の記事を引用しないようにしているが、今回テーマにした問題の本質を突く内容のため、以下の通りにあえて引用させていただくことにする。

 問題は、世界中のSEの中には単に「かっこよい」「これが最新のやり方だ」というだけの思いで、アジャイルに飛びつく人たちが少なからずいることだ。彼ら/彼女らは「今やアジャイルでなければいけない。ウオーターフォールは古い。捨て去るべきだ」と言う。一方で、アジャイルで進めるためには、より強いビジネスサイドのコミットメントが必要であるのを認識せず、ビジネスサイドにそのことを説明せず、彼らを巻き込む努力をしない。

 さらに彼ら/彼女らは、時に要件定義から逃げるためにアジャイルを持ち出すこともある。要件定義は創造的であるがゆえに、真剣にものごとを深く掘り下げて考え、自分の中で「つくっては壊す」を繰り返す必要があるからだ。この骨の折れるプロセスに真剣に向き合わず、システム化要件の検討が不十分なままにしてしまう例はあまりに多い。「今は要件が明確に定まっていませんが、アジャイルで進めるので大丈夫です」という、いいかげんな言い訳を何度聞いたことか。

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 読めば分かる通りで、澁谷氏はアジャイル開発そのものを否定しているわけではない。当事者を巻き込んでシステムの要件を真剣に検討する「上流」の工程を、アジャイル開発にかこつけてないがしろにする連中が大勢いることを問題視しているのだ。だから、これから先に私が書いた内容に反発したり、ばかにしたりしても、決して澁谷氏を巻き込まないようにしていただきたい。頼んだぞ。