
「GAFAやシリコンバレーのベンチャー企業のようなことはできないよ」。こう考える負け犬根性に染まった日本企業の経営者らは、大きな勘違いをしている。「あんなイノベーティブなことは難易度が高くて無理」ということだろうが、そもそもそこが間違っている。GAFAのようなイノベーションは、実は簡単なんだぞ。逆接的に言うと、簡単だからこそ日本企業は駄目になり没落したのである。
読者の中で「いくら暴論とはいえ何を訳の分からないことを書いているんだ。簡単なわけがないじゃないか」と笑っている人がいたとしたら、あなたも負け犬と同類である。あるいは今まで、DX(デジタルトランスフォーメーション)などに取り組んだことがないどころか、イノベーションの本質について考えたこともない人なのだろう。これまで一度でも何らかのデジタルサービスの立ち上げに携わったことがあるなら、日本企業が駄目な理由も含め「まさにその通り」とうなずくに違いないからね。
納得できない人のために、もう少し細かく説明しよう。これまでにない独創的なアイデアやビジネス企画を生み出すのは、確かに容易ではない。ただし、インターネットが爆発的に普及する前と比べると、格段に容易になった。インターネットが世界をつなぎ、オープンソースソフトウエア(OSS)など多様な技術を生み出すゆりかごになったことで、新しいビジネスを生み出すハードルは思いっ切り下がったのだ。そのアイデアを実装することも容易ならば、ビジネスを一気にスケールすることも容易だ。
さらに言えば、他の企業が「猿まね」つまり完全コピーするのも容易になった。韓国のSamsung Electronics(サムスン電子)はスマートフォンのビジネスを完コピすることに成功し、米Apple(アップル)をしのぐほどのスマホメーカーに成長したし、中国のアリババ集団や百度(バイドゥ)、騰訊控股(テンセント)も米国のAmazon.com(アマゾン・ドット・コム)やGoogle(グーグル)、米Meta Platforms(メタ)のサービスを完コピして飛躍した。東南アジアで急成長したテック企業もまたしかりだ。
念のために断っておくが、完コピつまり猿まねをばかにしているわけではないからな。それどころか、猿まねは絶対に必要、かつ重要なことだ。実際、過去には多くの日本企業が欧米先進国の製造業を猿まねすることで、日本はものづくり大国にのし上がったのだからね。いずれにせよ、GAFAのようなイノベーションは猿まねすれば容易に実現できるし、それをベースに自社独自のイノベーションを加えていくのも、これまた容易なのだ。
関連記事 猿まね大国ニッポンの転落、後進国化を暗示するITベンダーの惨状「木村は何を言っているんだ」と笑っていた読者も、そろそろ理解してもらえたと思う。要するに、インターネットの爆発的普及を契機に始まったデジタル革命によって、全世界でITをフル活用できるようになったことで、ビジネスのイノベーション(とその猿まね)が容易になったわけだ。だからこそ、GAFAが短期間に驚愕(きょうがく)の成長を遂げたし、シリコンバレーをはじめ世界中で新たなテック企業が誕生し、トラディショナルな企業もDXで変貌を遂げつつある。日本企業ばかりが取り残され、落ちぶれてしまったのが現状だ。