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 新型コロナウイルスの猛威が続くなか、2021年が始まった。新型コロナ禍の終息にはワクチンの接種開始を待つしかないが、いずれにしろ2021年は良きにつけあしきにつけ、これまでに見たことのない新たな「現実」を目の当たりにすることになるだろう。そんななか、我らが人月商売のIT業界は「いつか来た道」を再びたどろうとしている。

 何の話かと言うと、人月商売を潤してきたシステム開発案件が次々と「蒸発」するご時世だから、あの話である。SIer、あるいはSIerのパートナー企業である「手配師」のITベンダーによる下請け切り、そして下請けITベンダーの経営破綻、あらゆる手口を使った技術者の事実上の解雇など、景気の悪化局面で何度も見てきた光景のことだ。いよいよ「雇用の調整弁」として機能してきたIT業界の多重下請け構造がフル回転し始める。

 この「極言暴論」の読者ならよくお分かりかと思うが、私の基本スタンスは「人月商売のIT業界は滅ぶべし」である。労働集約型産業なのにハイテク産業のように偽装し、技術者を消耗品のように扱ってきた前近代的な企業たちだ。ハイテク産業の一員に生まれ変われないのなら、消え去ったほうがよい。普通なら下請けの中小企業の苦境に同情が集まるが、IT業界の多重下請け構造の末端で「人売り業」に明け暮れていた企業に同情を寄せる必要はない。

 ただし下請けITベンダーの経営破綻は、所属する技術者らの失業に直結する。こうしたITベンダーが案件減少のなかで生き残ろうとすれば、売り上げが技術者の頭数に比例する人月商売である以上、技術者を辞めさせる以外に打つ手がない。かくして、これまでの好況時に「未経験者可」などとしてかき集められて技術者に仕立て上げられた人たちは、これからの案件減少に合わせて切り捨てられる。人月工数としての総需要が大きく減るのだから、仕事にあぶれた人が失業するのは労働集約型産業の当然すぎる冷酷なメカニズムだ。

 本当なら、極言暴論で何度も挑発した通り、景気が比較的順調だったうちに、人月商売のITベンダー、特に下請けITベンダーの技術者は転職を企てたほうがよかった。もちろん人にはそれぞれ事情があるので「条件の良いときに転職しなかったのだから、失業しても自己責任だ」などと言うつもりはない。ユーザー企業などの中途採用意欲はまだまだ高いので、幸運を祈るのみである。

 だが、そろそろはっきりさせたほうがよい。何かと言えば「本当に技術者の雇用を守る必要があるのか。企業による解雇を明示的に認めるべきではないのか」という点だ。こう書くと、SIerかいわいの「木村嫌い」の関係者から「おいおい、木村がついに人でなしに成り果てたぞ」と陰口をたたかれそうだが、しばらく黙っていてほしい。自分たちが終身雇用のホワイト企業であるために、不況のたびに下請けITベンダーを切り捨ててきた連中に、そんなことを言われたくはない。