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 ソニーの「aibo(アイボ)」開発の舞台裏や随所に盛り込まれた独自技術などについて、開発チームに話を聞いたインタビュー連載の第3回。今回では、aiboのリアルな動きを実現するために導入した技術を中心に取り上げる。インタビューに応じてくれたのは、主に商品企画を担当した松井直哉氏(同社 事業開発プラットフォーム AIロボティクスビジネスグループ 商品企画部 統括部長)、ハードウエア開発を担当した石橋秀則氏と荒木拓真氏(いずれも同グループ SR事業室 商品開発グループ)である。(聞き手=根津 禎、進藤 智則、内山 育海、構成=赤坂 麻実、写真=加藤 康)

aiboの生き物のような動きを実現する上で、特に難しかったのはどの部分か。

石橋氏
石橋氏
(写真:加藤 康、以下同)

石橋氏:あえて3つ挙げるなら、第1にアクチュエーターの小型化、第2に首や耳などの多数のアクチュエーターやセンサーを小さな頭部に詰め込んだこと、第3に腰の部分にお尻を振る機構を設けたことだ。

 最初のデザインスケッチでは、aiboがダイナミックな動きをしている場面が描かれていたので、「おい、aiboがこんなに走っているぞ!」と、開発陣に気合いが入った。こうした動きを実現するには、相当程度大きなトルクを出せるアクチュエーターが必要になるが、実装空間は限られているので、小型でそのような大きなトルクを達成するのは難しい。そこで、小さくても大きなトルクを出せるアクチュエーターを内部で独自に開発した。

 既製品で同じトルクを達成しようとすれば、本体の内部構造を大幅に変えて、腰のくびれもあきらめて先代AIBOのような「ずん胴」になるうえ、筋骨隆々の脚が付いたデザインになってしまう。

aiboが走るデザインスケッチで開発者に気合い

 アクチュエーターを小型・高トルクにするために、利用するDCブラシレスモーターは新規に設計した。社外の専業メーカーと協力して開発した。モーターの出力は、初代AIBOに比べておよそ2倍あるにもかかわらず、サイズは小さい。複数のモーターを1つの製品のために独自開発するのは、ソニーでも非常にまれである。

 アクチュエーター向けに新規開発したモーターは1種類ではなく3種類ある。脚腰などの1軸2軸アクチュエーター向けと頭・口向け、耳・尻尾向けである。