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液状化が倒壊を招いた可能性は低い

 現地メディアのなかには、敷地が川沿いにあることなどから、地盤が液状化したことで建物が倒壊したのではないかという可能性も報じられていた。

「美崙渓」という川沿いに北から雲門翠堤大楼を眺める(写真:菅原 由依子)
「美崙渓」という川沿いに北から雲門翠堤大楼を眺める(写真:菅原 由依子)
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 現地の構造エンジニアであり、台南市結構工程技師公会の常務理事を務める施忠賢氏は、「確かではないが、約30年前に土地が整備され、暗渠の上に敷地がある可能性がある」と説明する。「美崙渓」という川に続く水路がかつてあったが、土地を整備するために南側へずらした経緯があると言う。そこで整備した土地の上に建てられたのが、雲門翠堤大楼というわけだ。確かに現在の敷地南側を見ると、水門が隣接していた。

敷地の外、南側から撮影。写真右に水門が見える(写真:菅原 由依子)
敷地の外、南側から撮影。写真右に水門が見える(写真:菅原 由依子)
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 しかし、施氏は液状化が倒壊の原因となった可能性は低いとみている。敷地のある一帯はかつて海があった場所で、むしろ固い。地盤は石と砂の下に深さ10mぐらいからサンゴ石が埋まっている。さらに下には岩盤があり、それほど弱い地盤ではないはずだと言う。建物は高層だが地下に杭はなく、直接基礎で建てられていた。

 「私は2年前の美濃地震も経験したが、液状化であれば敷地の周囲で大量に水が噴き出るはず。いまのところ雲門翠堤大楼の周りを見渡してもそうした現象は見当たらない。地面に幅1cm程度のひび割れが見られるぐらいだ」と施氏は言う。

敷地の外、南側から地面と低層部を撮影。建物南側は4階が地面に接している状態だ。地面はひび割れ、粉々に砕けた窓のガラスが散乱していた(写真:菅原 由依子)
敷地の外、南側から地面と低層部を撮影。建物南側は4階が地面に接している状態だ。地面はひび割れ、粉々に砕けた窓のガラスが散乱していた(写真:菅原 由依子)
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 現在、建物の解体は始まったばかりで、地下室の状況はまだ明らかになっていない。いずれも外から観察し、専門家たちの推測を頼りに現時点で可能性がある倒壊のメカニズムと原因を探った。興味深いのは、花蓮市内で大きな被害があった建物は雲門翠堤大楼を含めて4棟で、断層近傍に集中していたことだ。たとえ断層近傍は建物が壊れやすいとしても、なぜ他の建物は倒壊しなかったのか。次の記事では、その謎に迫りたい。