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 ほんの少し目を離した隙に、子どもがベランダの手すりを登って外に身を乗り出していたーー。好奇心が旺盛な子どもが車の音や、動物の鳴き声に興味を示してベランダの手すりをよじ登り、階下を覗き込んだときに転落する事故が多発している。東京都によると、2歳児の事故が最も多く、次いで3歳児、4歳児となっている。

 2歳児が標準的な高さの手すりを登ることができるのか。その実証実験を収めた映像がある。2歳児でも腰壁を利用して高さ1.1mの手すりを登ってしまう様子が分かるだろう。

2歳児・4歳児・6歳児を対象とした、手すりのよじ登り実験(資料:東京都生活文化局)

 東京都は2月15日にベランダ手すりの安全対策に関する検討結果を発表した。2~6歳児を対象にしたよじ登り実験の結果から、手すりの高さや形状など、子どもが登りにくいベランダ手すりの条件をまとめた。

 今後は、ベランダ手すりの安全対策に対する提言をもとに、手すりの製造に関係する事業者団体などに安全性の高い手すりの開発基準を提案する。経済産業省にはJIS(日本工業規格)の改訂を働きかける。また、消費者庁や消費者団体には、消費者への注意喚起などの協力を呼びかける方針だ。

 子どもがベランダから転落する事故は、全国で把握されているところでは毎年約10件のペースで発生している。東京消防庁などの協力を得た調査によると、2002年4月から17年3月までの15年間で、ベランダからの転落による12 歳以下の子どもの受診または救急搬送は145 件あった。そのうち入院は全体の7 割以上、死亡に至った事例は2 件あった。

2002~17年度の子どもの転落事故件数。毎年10件ほどのペースで発生している(出所:東京都生活文化局資料を抜粋)
2002~17年度の子どもの転落事故件数。毎年10件ほどのペースで発生している(出所:東京都生活文化局資料を抜粋)
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 ベランダからの転落原因で最も多いのはよじ登りだ。2~3歳児でも、手すりの腰壁やエアコンの室外機などを足がかりに手すりを乗り越えてしまう。

 建築基準法では、共同住宅などの2階以上のバルコニーや屋上に高さ1.1m以上の手すり壁や柵、金網を設置するよう定めている。このほか、都が16年に作成した「子育てに配慮した住宅のガイドライン」などに腰壁の高さ、格子の幅などについて安全な寸法が記されている。都は、これらの基準をもとに、手すりの安全性の検証を進めた。

転落防止に配慮した寸法。東京都が16年に作成した「子育てに配慮した住宅のガイドライン」に建物を整備する際の配慮事項として記されている(出所:東京都都市整備局資料を抜粋)
転落防止に配慮した寸法。東京都が16年に作成した「子育てに配慮した住宅のガイドライン」に建物を整備する際の配慮事項として記されている(出所:東京都都市整備局資料を抜粋)
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