独自のカプセルを開発し、カプセルホテルのイメージを刷新したナインアワーズが、2017年末から第2弾ブランドを展開している。1号店となる「℃(ドシー)恵比寿」は、旧ホテルのカプセルを再利用し、独自のサウナを併設するカプセルホテルだ。リノベーションによるカプセルホテルでまた、新たな価値観を示す――。
「℃(ドシー)恵比寿」は、カプセルルームとシングルルームを備えていた既存のホテルをリノベーションした新店舗だ。オリジナルのカプセルを開発した「9h(ナインアワーズ)」ブランドとは違い、ドシーでは旧ホテルのカプセルを再利用している。本格的なサウナ空間と流水に包まれるような感覚が特徴のシャワー設備で、これまでのサウナとは一味違ったリフレッシュ体験を提供する。
ナインアワーズの油井啓祐代表と店舗設計を手掛けたスキーマ建築計画の長坂常代表に、ドシー恵比寿で取り組んだ「体験のデザイン」について語ってもらった。
古いカプセルホテルを、ナインアワーズ発の新ブランドとしてリノベーションするというお題は、かなり難題だったのでは?
油井 9hは新築プロジェクトですが、新しいものをつくって消費していくことだけじゃなくて、今残っているもの、まだ使えるものをちゃんとリユースしたいという思いも元々ありました。
ただ、40年近く前に近未来的なものとして誕生したカプセルユニットって、ちょっと特殊ですよね。古いカプセルのある空間をどう装飾しても違和感しかないと感じ、これを生かすのは難易度の高いプロジェクトだなと。古いものを生かしながら端正に整えていくしか方法はない。店舗設計をお願いするなら、長坂さんしかいないと思いました。
長坂 最初にお話をもらったとき、9hという完ぺきにでき上がったキャラクターに勝てるわけない、どうしようって思いましたよ(笑)
けれど、昔からみんなが知っているカプセルホテルを改修するという話は面白いなと。まずは企画レベルで、9hとの違いをきちっとつくりたいと思いました。ただ、だからといって全く予想のつかない今までにない組み合わせを考えるよりも、「カプセルホテルといえばサウナ」というくらいオールドスタイルな組み合わせを、あえて提案しました。そのステレオタイプな組み合わせで印象を変えることができたら、それこそ一過性で終わらず、バージョンアップとして強い味方が付くと考えたのです。
それができると自信があったのは、話をもらった直前、ヘルシンキを訪れていたのがきっかけです。フィンランドのサウナは、自然があってこそなんですよね。サウナで汗をかいた後、湖に飛び込んだり海に飛び込んだり、冷たい中に身を置いてクールダウンする。自然環境と戯れるサウナなんです。それがすごく気持ち良かった。
日本のサウナって、水風呂と往復する、ストイックなものじゃないですか。そこから完全には抜け切れないまでも、もう1歩、新しい提案ができるんじゃないかなと思ったんです。