建物の1階や地面、アイレベルの風景が良くなれば、人の笑顔が自然に集まる街になる──。都市の「グランドレベル」の役割に改めて目を向け、これを名前に冠した会社がある。その代表を務め、新著も発行した田中元子氏に、「あらゆる1階を追求する」理由、そして、どのような方法で街を変えようとしているのかを聞いた。
どうして株式会社グランドレベルの設立に至ったのですか?
私たちは建築分野を中心に本や雑誌の編集などを手掛けるユニット「mosaki」(モサキ)の活動を2006年から続けています。2013年に事務所を引っ越したとき、新事務所が広く、持て余していたので、軽い気持ちでバーカウンターをつくり、友人・知人に声をかけて来てもらっては、オリジナルのカクテルを振る舞う、という遊びをするようになりました。それを続けているうちに、フリーで振る舞う楽しさのとりこになっていきました。
やがて同じような振る舞いを外に出て、街でやってみたいと思うようになり、そのために軽くてコンパクトな屋台を設計してもらいました。完成した屋台を住宅街やオフィス街、公園や水辺など、いろいろな場所に持ち出し、そこでコーヒーを入れて不特定多数の人々に振る舞うようになったのです。
屋台から街を観察していると、人の目の高さに自然に見えてくる風景、つまり建物の1階や公園、広場などに活気や人けが感じられないことが、とても気になるようになりました。それらには、今よりもっと良くなれる「伸びしろ」がある。それらが良くなることは物件の所有者のためだけでなく、街や社会にとっても必要なことだと思ったのです。そこで「1階づくりはまちづくり」をコンセプトに2016年9月、株式会社グランドレベルを立ち上げました。