福岡県の東峰(とうほう)村が実施した、築120年の古民家を観光拠点となる宿泊施設として再生する「東峰村ゲストハウス設計コンペ」で、納谷建築設計事務所(川崎市)の案が最優秀に選ばれた。3月19日に東峰村が公表した。納谷建築設計事務所は納谷学氏、納谷新氏の兄弟が共同主宰する設計事務所。住宅の増改築に20年以上前から取り組み、多くの実績がある。いわば“住宅リノベーションの先駆者”が、これまでの経験を生かして古民家の観光拠点化をどのように実現するかが注目される。
コンペ対象は東峰村・竹集落の棚田に立つ古民家「竹集落農家住宅」。約120年前に伝統構法でつくられたが、昭和に入って在来構法で増築されている。東峰村は、集落に新しい仕事をつくり出し、集落人口の減少抑制と美しい景観を維持することを目的として、古民家を宿泊施設に転用することを決めた。
提案の要求内容は、昭和の増築部分を撤去し、築120年部分をベースにゲストハウスに再生するというもの。敷地面積907m2。既存古民家(宿泊棟)の延べ面積は約185m2、新築するケータリング棟兼管理棟は約30m2。予定工事金額は7000万円以内(税込み)。
ゲストハウスは1棟貸し(1日1組)を基本とし、宿泊代は、「高めの設定」を想定する。建物の仕様に関しては、「今後、標準となってくるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)仕様に準じて、環境やランニングコストに配慮」するよう求めた。
選考は2段階方式で、審査は田上健一・九州大学大学院芸術工学研究室教授(審査委員長)ほか計8人が行った。1次審査の応募は106点。過去の実績や作品などを審査し、神家昭雄建築研究室、yHa architects、里山建築研究所、納谷建築設計事務所、森田一弥建築設計事務所、大角雄三設計室の6者を2次選考対象者とした。2次審査は提案書とヒアリングの内容を審査。得点が318点で最も高かった納谷建築設計事務所の案を最優秀とした。次点は297点のyHa architects(平瀬祐子代表)だった。審査講評は公表されていない。