スターツグループの研究機関であるスターツ総合研究所は3月28日、AI(人工知能)を活用して賃貸住宅の建築計画と事業計画を自動作成するシステム「LAPLACE(ラプラス)」を開発したと発表した。
スターツ総合研究所によると、従来は複数の領域の専門家で1週間以上かかっていた作業が、約15分でできるようになる。5月にベータ版のグループ内利用を開始し、2018年中に提携する不動産会社や建設会社、金融機関などに向けたWEBサービスの提供開始を目指す。現在、特許を出願中だ。
自社開発したAIの肝となるのは、建設や不動産仲介、金融・コンサルティングなどの事業を多角的に展開するスターツグループが蓄積してきた“生きたビッグデータ”だ。
活用するデータは、土地活用の企画提案や資産運用コンサルティング、賃貸住宅などの設計・施工を手掛けるスターツCAMで蓄積してきた直近3年間の建築費データ約1600件、不動産仲介のピタットハウスなどで得てきた募集掲載データや成約データはそれぞれ、2.5年分約2億件、20年分約31万4000戸に上る。
AIはこれらのデータを解析して判断基準などを抽出し、建築費の算出や賃料設定、稼働率や賃料の推移などの最適解を導き出す。さらに、協力会社のリソースと連携しつつ、建築計画や事業計画を自動で作成する。各リソースの機能は、API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)によって外部から呼び出して利用する。「地図・地番データベース」はNTT空間情報が、「設計エンジン」はコンピュータシステム研究所が、「3次元地盤モデルデータ」は応用地質がそれぞれ提供するサービスや技術だ。
AI開発を監修したビッグデータ解析や不動産経済学を専門とする清水千弘・日本大学スポーツ科学部教授は、「リアルかつ分析可能なデータをここまでそろえられたシステムは世界初といっても過言ではない」と評価した。
スターツコーポレーションの関戸博高取締役副会長は、「地域に根差した街なかの中規模建築という大きなマーケットを中心に不動産や建築、金融などを手掛ける強みを生かし、建物をデータ化していくことは、大きなビジネスチャンスになる。透明性の高いデータを使って提案できる点において、後発の追随も難しいと見ている。不動産テックは、まだまだブルーオーシャンだ」と抱負を語った。