さびにくいはずのステンレス部品でも、経年劣化は避けられない――。前橋市の温浴施設で2月に発生した内装部材の落下事故について、所有者の市がこのほど検証結果を公表した。この事故では利用者が顔に15針縫うけがを負った。落下したのは浴室の高さ7.4mにあったステンレス製の見切り金物で、同じくステンレス製ビスで躯体に接合されていた。
検証の結果、事故当時、ビスはほとんどが破断し、金物がシーリング材だけで保持された状態だったことが判明した。施設の開業は1997年で、竣工以来約20年にわたって内装仕上げなど非構造部材の点検が実施されていなかった。
浴室の環境が腐食を促進
事故があった施設は「富士見温泉見晴らしの湯ふれあい館」(前橋市)。2018年2月13日、女湯の浴室で、トップライトの窓台の鼻先を覆う見切り金物が落下した。落下物は浴室と更衣室をつなぐ前室の上端にぶつかって跳ね、サウナ室から出て浴室に向かう途中だった利用者の顔に当たった。利用者は切り傷を負って救急搬送された。
落下物は長さ4m、幅8cm、重さ5.7kg。トップライトは天井近くの壁にあり、換気扇に隣接していた。検証結果によると、浴室内の高温多湿な空気が集まる位置にガラス面があり、窓台付近は常に結露水にさらされていた。市はこうした高温多湿で水がしたたる使用環境が、ビスの腐食を促進したとの見方を示した。