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 プリツカー建築賞受賞者の米国建築家リチャード・マイヤー氏(83歳)が、3、4月に米ニューヨーク・タイムズ紙が報じた記事で、過去のセクハラ行為の告発を次々と受けている。現地報道の内容のほか、マイヤー氏の設計事務所や米国の建築関係団体などのコメントについては前編記事(4月26日)で紹介した。後編では、被害者の声を交えつつ、マイヤー氏が払ったセクハラの代償の大きさを伝える。

2017年12月に撮影された、米国の建築家リチャード・マイヤー氏。1934年ニュージャージー州生まれ。コーネル大学で建築を学び、63年ニューヨークで設計事務所を開いた。住宅や公共施設など幅広いジャンルの建築を手掛けてきた。白い外装や幾何学的な格子パターンなどを用いたデザインが特徴だ(写真:Shutterstock/アフロ)
2017年12月に撮影された、米国の建築家リチャード・マイヤー氏。1934年ニュージャージー州生まれ。コーネル大学で建築を学び、63年ニューヨークで設計事務所を開いた。住宅や公共施設など幅広いジャンルの建築を手掛けてきた。白い外装や幾何学的な格子パターンなどを用いたデザインが特徴だ(写真:Shutterstock/アフロ)
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 セクハラ告発をきっかけにマイヤー氏が受けた社会的制裁は、米国の建築界にとどまらず、不動産業界や教育界、芸術界にも広がっている。マイヤー氏が設計したニューヨークに立つビルでは、デベロッパーが販売PRサイトから同氏の名前を削除した。米国の建築メディアは、ビルの今後の販売価格への影響にとどまらず、建築家のビックネームに頼ることのリスクなどを語り始めた。

 マイヤー氏は女性活躍への支援にも熱心だった。同氏の母校で、建築の名門校でもあるコーネル大学は、建築家を目指す女子学生のための奨学金制度の見直しを決定。同制度は、マイヤー氏の業績を記念して設立したものだった。さらに競売大手のサザビーズは、マイヤー氏が描いたコラージュ画などの個展を開催中だったが、直ちに中止し関係サイトを閉鎖した。

 こうした動きを受けて、被害者は今何を思うのか。告発者の1人であるキャロル・ヴェナ・モンド氏が日経アーキテクチュアの取材に応え、コメントを寄せてくれた。