広島県尾道市に新たな観光スポットが生まれる。インド・ムンバイを拠点に活動する建築集団スタジオ・ムンバイ・アーキテクツ(以下、ムンバイ)が、改修の設計監修を務めた多目的施設「LOG(ログ)―Lantern Onomichi Gardenー」だ。2018年12月7日に開業する。同施設は、ムンバイが日本で初めて手掛けたプロジェクト。12月4日に開かれた内覧会の模様をいち早くお伝えする。
ログは、市の中心部から、観光スポットの千光寺につながる坂道の途中に位置する。使われなくなっていた集合住宅「新道アパート」を改修した。建物は1963年に竣工し、規模は延べ面積1180m2。構造は鉄筋コンクリート造で、3階建てだ。宿泊施設を中心とし、ダイニングやカフェ、ギャラリーなどで構成した。
事業者、運営者はともにse-ed(シード、広島県尾道市)。瀬戸内海近隣における地域活性化などの事業を展開するせとうちホールディングス(広島県尾道市)が100%出資する子会社だ。シードの吉田挙誠代表取締役は、「改修前は、周囲から閉じた空間だった。改修時に開放感あふれる施設を目指した」と話す。同施設は、3階の宿泊施設を除き、観光客や地域住民も利用できる。
ムンバイは、ビジョイ・ジェイン氏がインドや欧米で建築を学んだ後、出身地のインド・ムンバイで1995年に設立した設計事務所だ。建築家や大工、石工などが集まり、その人的ネットワークにより設計から施工まで一貫して行う製作スタイルが特徴だ。
地域の自然素材や伝統的技術を重視し、手作業による施工を中心とした建築を多く手掛ける。代表作にはリーディング・ルーム(インド・ナガアン、03年竣工)や、パルミラの住宅(インド・ナンドゲーアン、07年竣工)、コッパ―・ハウス2(インド・チョンディ、11年竣工)などがある。
ムンバイが重視するのは、地域の歴史や文化。今回のログでは、尾道の海と山に挟まれた自然地形や、歴史的建築物が多く残る景観と溶け込むように仕上げた。施設内部も、家具や壁・土間などの色彩によってムンバイ独特の感性を引き出し、魅力ある空間となっている。