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 カタール東部のアル・ワクラで、故ザハ・ハディド氏の設計によるサッカースタジアム「アル・ジャノブ・スタジアム」がオープンした。2022年にカタールで開かれるサッカーワールドカップ(W杯)のグループリーグや準々決勝で使うために建設され、そのこけら落としとして19年5月16日にアミール・カップの決勝戦が行われた。

カタール東部でオープンしたサッカースタジアム「アル・ジャノブ・スタジアム」。フィールドから見上げる(写真:Hufton+Crow)
カタール東部でオープンしたサッカースタジアム「アル・ジャノブ・スタジアム」。フィールドから見上げる(写真:Hufton+Crow)
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2019年5月16日に、こけら落としとしてアミール・カップの決勝戦が行われた。中央のバルーンに映っているのは、設計者の故ザハ・ハディド氏(写真:Luke Hayes)
2019年5月16日に、こけら落としとしてアミール・カップの決勝戦が行われた。中央のバルーンに映っているのは、設計者の故ザハ・ハディド氏(写真:Luke Hayes)
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 特徴的なデザインは、中東の伝統的な帆船であるダウ船をモチーフにした。カタールは夏に40度前後まで気温が上がり、厳しい暑さとなる。そうした時期でも使えるように、開閉式屋根と空調を備えた。

プリーツ状に折り重なるPTFE(四フッ化エチレン樹脂)を使った屋根。下のパネルには、アラビアの文様やカリグラフィーを参考とした幾何学模様を施し、デザイン性を高めた(写真:Hufton+Crow)
プリーツ状に折り重なるPTFE(四フッ化エチレン樹脂)を使った屋根。下のパネルには、アラビアの文様やカリグラフィーを参考とした幾何学模様を施し、デザイン性を高めた(写真:Hufton+Crow)
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19年5月16日に開かれた決勝戦で、盛り上がる観客席の様子(写真:Luke Hayes)
19年5月16日に開かれた決勝戦で、盛り上がる観客席の様子(写真:Luke Hayes)
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 アル・ワクラは首都ドーハから20kmほど南下した場所にある街だ。20年までに開通予定の鉄道ドーハ・メトロが通る計画で、それが完成すれば首都へのアクセスも向上する。スタジアムは、拡大する街の中で期待の施設といえる。

敷地周辺の配置図(資料:Zaha Hadid Architects)
敷地周辺の配置図(資料:Zaha Hadid Architects)
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 発注者は、W杯の組織委員会(Supreme Committee for Delivery & Legacy of the 2022 FIFA World Cup Qatar)だ。設計はザハ・ハディド・アーキテクツ、リードコンサルタントはAecomが担当し、開閉式屋根のデザインは、ドイツに本社を構えるシュライヒ・バーグマン・パートナーが手掛けた。

 スタジアムはメインのコンコースから入ると、客席のうち真ん中ほどの高さに出る。ゾーンごとに異なるアクティビティーを想定しており、東側は観客が出入りするエリアとなっている。北東はコミュニティーの市場、南東にはアクティビティー・パークを配置。西側の放射状に広がる区域は、選手や関係者たちの車寄せとする。

 さらにW杯組織委員会の公式ホームページによると、周辺には様々な用途の施設を、スタジアムと一緒に開発する予定だという。例えば、学校や結婚式場の他、サイクリングや乗馬、ランニングのトラック、レストラン、市場、ジムなどだ。集合住宅の建設も進め、地域のコミュニティー醸成を図る。