全3135文字
PR

 国や都市の成長過程では避けることのできない「都市化(アーバニゼーション)」の課題に、21世紀の現在、どのように立ち向かうのか。途上国の民間セクター向けとしては世界最大の開発金融機関であるIFC(International Finance Corporation、国際金融公社)による国際シンポジウムを取材し、東アジア・パシフィック地域担当局長、ヴィヴェク・パサック氏へのインタビューと併せて紹介する。

 「国や都市の成長は、イノベーションを起こし、新しい雇用を生み出せる企業を誘致できるか否かにかかっている」──。先行して成長してきた国々が、より高い都市の魅力創出に向けて競い合う中で、後発の国々は、まず基本的な生活インフラの水準を向上させる必要がある。

 これは、「2019年U20 東京メイヤーズ・サミット」のサイドイベントに合わせて来日したIFC東アジア・パシフィック地域担当局長のヴィヴェク・パサック氏が、改めて強調した点だ。

 世界27都市の参加によって活動する「U20(Urban20)」は今年、東京都を議長都市として2019年5月20〜22日に同サミットを開催。同年6月28〜29日開催の「第14回20か国・地域首脳会合(G20大阪サミット)」における国家レベルの議論に、都市レベルの視点を反映させる、という趣旨によるものだ。世界銀行(以下、世銀)グループの1機関であるIFCは、そのサイドイベントとして、「都市課題の解決に向けて民間セクターが果たす役割」と題する国際シンポジウムを主催した。

2019年5月20日開催の国際シンポジウム「都市課題の解決に向けて民間セクターが果たす役割」の様子(写真:IFC)
[画像のクリックで拡大表示]
2019年5月20日開催の国際シンポジウム「都市課題の解決に向けて民間セクターが果たす役割」の様子(写真:IFC)

 日本をはじめ20世紀の成長期に国際銀行の支援を受けている国々と比較し、現在の新興国では、より持続可能な発展や、そのための環境配慮型のプロジェクトの推進が喫緊の課題となっている。IFCは、例えば建築関連では、途上国向けに比較的安価にグリーンビルディング認証を提供できる「EDGE(Excellence in Design for Greater Efficiencies)」システムを開発するなど、この領域に貢献してきた。

 今回のIFC主催の国際シンポジウムでは、U20の加盟都市であるジャカルタ市、ブエノスアイレス市、ダッカ市、ボゴタ市、ヘルシンキ市、西ジャワ州などの政府から首長などの代表者が登壇。日本側からは伊藤忠商事などが加わり、公民連携によって都市課題を解決する新たなビジネスモデルの在り方や、それを支援するファイナンス手法の必要性などを議論した。

 前出パサック氏に、IFCの取り組みや、国際シンポジウムを主催する趣旨を聞いた。

今回の国際シンポジウム開催の目的は?

 「過去40〜50年間に世界で起こってきた事象を見るなら、『都市化』が大きな課題となってきたのは間違いない。多くの人が雇用を求めて都市に移り住み、これが交通、住宅、下水、電力などのインフラに対する圧力になってきた。そこから生じる問題の改善のために、政府の人間や都市の首長、国際的な開発組織、あるいは投資家などのステークホルダー(利害関係者)が協力し合い、イノベーティブなソリューションを生み出す必要がある」

 「どうやってプロジェクトを成し遂げたのか、そのときどこに”落とし穴”があるのかなどは実践してみて初めて分かる。そうした前例に学び、今後よりうまく実践するための材料とする。それぞれの成功からも間違いからも学べる機会を設けるのが、こうしたフォーラムを開催する目的だ」

IFCは、環境配慮型プロジェクトのための資金調達手段、いわゆる「グリーンファイナンス」に寄与してきた。この領域で起こっている変化はあるか?

 「過去20年の間に、気候変動対策や再生可能エネルギーの分野には確実に変化が起こっている。要するに、それらはもはやCSR(企業の社会的責任)という以上に、ビジネスとしてもうかる、企業として合理的だから取り組むものなのだ。それが過去との違いだ。グリーンビルとそうでないビルのどちらかに投資する機会があるとしたら、10年後の再販価値はグリーンビルのほうが高くなる」

 「グリーンファイナンスは、今後大いに飛躍すると考えている。今はもう、気候変動対策などにフレンドリーでない事業に対する投資というのは、非常にリスクが高いと理解したほうがいい。特に近年の動きとしては『グリーンボンド』、すなわち環境配慮型の事業のために債券を発行する資金調達の仕組みが生まれたのが大きな出来事だ」