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 ワークプレイスや都市に新たな価値を与えるために、IoT(モノのインターネット)を生かそうとする動きが目立つ。不動産分野向けにIoTプラットフォームを提供するMyCityの代表取締役、石田遼氏に最新動向を聞いた。

MyCity 代表取締役 石田遼氏
MyCity 代表取締役 石田遼氏
1986年生まれ。東京大学大学院院工学系研究科建築学専攻(隈研吾研究室)修了後、マッキンゼー・アンド・カンパニーで都市開発案件など、生体認証技術を手掛けるLIQUIDで海外事業などを担当した後、2017年にMyCity設立。19年4月にpoint0取締役就任(写真:日経アーキテクチュア)
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MyCityの主な業務は、IoTプラットフォームをデベロッパーの開発案件に導入し、オフィスにおける働き方改革などをサポートする、といった内容ですね。手応えはいかがですか?

石田 デベロッパーの皆さんは今、そうした取り組みが必要だと認識していますが、2017年に会社を始めた頃は「半歩早い」かなという感触でした。「そこまでやらなくていいんじゃないか」という反応だったんです。ところが、どんどん気運が高まり、19年の初めぐらいには逆に、IoTの話をしていないデベロッパーはいないぐらいになりましたね。どこでも、こちらの話を聞いていただける状況です。

 センサーの価格が下がったとか、スマホのWi-Fiなどを常時オンにしているユーザーが普通になったとか、いろいろ要因はあると思います。しかし、不動産に限れば、むしろ業界の方々の意識変革が影響として大きいような気がします。そこに働き方改革という流れが生まれ、今の日本でタイミングよく、それらが重なったんです。

 IoTの前にはユビキタスなどの話がずっとあって、技術として今まで全くできなかったわけではない。今は、それを実際にテナントに対するサービスとして提供できているというのが、新しい価値なんだと思います。

ワークプレイスの変革に関しては、什器のメーカーやパソコンのベンダーが取り組んできた歴史があります。デベロッパーが主導し始めているのですか?

石田 デベロッパーは働く環境の全体をつくるわけですから、IoTを用いるトータルソリューションを提供する立場になったときにメーカーよりも「強制力」を発揮できる。空調、照明、什器などの個別のメーカーをつないでいくのは非常に大変なんですが、トップダウンで進めるのが可能なら、壁を乗り越えやすくなるはずです。

 一方、IoTを導入する際、デベロッパー内には複数の物件に横串を刺して考える職能は、まだ育っていません。賃料以外でも稼げるよう、業態を変えていくべき時期なのは確かなので、端境期なのだと思います。

 デベロッパーの方々には、森ビルがBCP(事業継続計画)のために六本木ヒルズ(03年開業)に非常用発電機を導入した頃の話をしています。そうした前例は、スペックとしてスタンダードになると無視できなくなる。それと同じで、「このビルにIoTは入っていますか?」「ログ情報は取れますか?」という話が遠からず普通に交わされるようになると思います。