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 東日本大震災で吊り天井が大規模崩落したミューザ川崎シンフォニーホール(川崎市)を巡る訴訟が終結した。復旧費約20億円の賠償を求め、所有者の川崎市が都市再生機構(UR)など8者を訴えていた裁判だ。裁判所が1審、2審とも原告側の請求を棄却したことを受け、市は2019年11月20日、最高裁判所への上告を断念したと発表した。以降では、一連の裁判の経緯を振り返る。

 2審の東京高等裁判所が判決を言い渡したのは19年11月7日。被告側の責任を認めず市の請求を棄却した1審判決(横浜地方裁判所18年5月31日判決)を支持し、再び市の請求を棄却した。

 これを受けて、川崎市の福田紀彦市長は次のような談話を発表した。「震度5強程度の中規模地震だったにもかかわらず、大きな被害を受けた。それでもなお、建築に携わった者に責任がないという判決は、受け入れ難く、容認できない。しかし、上告したとしても有利な結果を得られる可能性が極めて低く、苦渋の決断ではあるが、上告を断念した」

吊り天井が崩落したミューザ川崎シンフォニーホール(写真:川崎市)
吊り天井が崩落したミューザ川崎シンフォニーホール(写真:川崎市)
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 ミューザ川崎シンフォニーホールは、川崎市の再開発事業により03年12月に完成した文化施設の4~7階に位置する。客席数は約2000席。音響効果を重視し、吊り天井に厚さ8mmの繊維混入石こうボードを5枚重ねで用いており、1m2当たりの重さは約90㎏だった。

 11年3月11日に発生した東日本大震災で、建物付近の地震計は震度5強の揺れを観測した。この揺れで落下した天井は、水平投影面積の54%。崩落時にイベントなどは開かれておらず、人的被害は出なかった。

 市は「施設は震度6強の揺れを想定して設計してあった。崩落した吊り天井には震度5強の揺れに耐えられないという瑕疵がある」とみて、13年8月、8者を相手取って横浜地裁へ提訴した。原告側には同ホールを拠点とする東京交響楽団も加わった。

 8者とは、事業施行者で設計者のUR、施工者の清水建設、大成建設、安藤ハザマ、日東紡音響エンジニアリング(現・日本音響エンジニアリング)、オクジュー、設計や工事監理を担った松田平田設計、日東設計事務所だ。