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 大成建設とカネカは、建物の外壁や窓と一体化させた太陽電池モジュールで発電する外装システム「T-Green Multi Solar」を共同開発した。外壁で発電できることに加えて、採光や眺望、高い意匠性を確保した。中小規模ビルのZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化やBCP(事業継続計画)対策の強化などを狙う。

建材一体型の太陽電池「T-Green Multi Solar」を外装に設置した中小規模ビルのイメージ(資料:大成建設)
建材一体型の太陽電池「T-Green Multi Solar」を外装に設置した中小規模ビルのイメージ(資料:大成建設)
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 「T-Green Multi Solar」には、太陽電池モジュールを窓ガラスと一体化したシースルータイプと、外装パネル化したソリッドタイプの2つがある。

 シースルータイプは、太陽電池を挟んだ合わせガラスとLow-E膜を張ったガラスを組み合わせた複層ガラスだ。合わせガラスの中間には、4mm幅の太陽電池を4mmずつ隙間を開けてストライプ状に配置する。太陽電池の隙間を通過してLow-E膜で反射した近赤外線は太陽電池の裏側に吸収され、両面で発電できるのが特徴だ。この仕組みについて大成建設とカネカは特許を出願済みだ。

複層ガラスのサンプル(左)とシースルータイプの特徴。シースルータイプは、太陽電池を挟んだ合わせガラスとLow-E膜を張ったガラスを組み合わせた複層ガラスだ(資料:大成建設、写真:本誌)
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複層ガラスのサンプル(左)とシースルータイプの特徴。シースルータイプは、太陽電池を挟んだ合わせガラスとLow-E膜を張ったガラスを組み合わせた複層ガラスだ(資料:大成建設、写真:本誌)
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複層ガラスのサンプル(左)とシースルータイプの特徴。シースルータイプは、太陽電池を挟んだ合わせガラスとLow-E膜を張ったガラスを組み合わせた複層ガラスだ(資料:大成建設、写真:本誌)

 ガラス面の透過率は約50%で、離れた場所からは反対側が透けて見えるが、近くでは太陽電池が黒い線としてはっきり見える。開発に当たって意匠や納まりについて協力している大成建設設計本部建築設計第一部長の井深誠氏は、「事務所など長時間座って作業する部屋では、床や天井付近の一部に配置するのがいいだろう。一方、隣の建物に面するなど視線が気になる場所や、廊下など動線上の窓には全面に配置するなど、使い分けもできる」と説明する。

シースルータイプの後ろに植栽を置いた場合の見え方。透過率は約50%で、透け方と影の落ち方にこだわった。既存のシースルータイプの中には、ガラスに正方形の太陽電池セルを数cmずつ隙間を開けて並べたものがあり、床面などにくっきりと影が落ちる。大成建設とカネカが開発したシースルータイプは、影も気になりにくい(写真:日経アーキテクチュア)
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シースルータイプの後ろに植栽を置いた場合の見え方。透過率は約50%で、透け方と影の落ち方にこだわった。既存のシースルータイプの中には、ガラスに正方形の太陽電池セルを数cmずつ隙間を開けて並べたものがあり、床面などにくっきりと影が落ちる。大成建設とカネカが開発したシースルータイプは、影も気になりにくい(写真:日経アーキテクチュア)

 ソリッドタイプは開口部以外に設置する。一般的な太陽電池モジュールは、セル(太陽電池素子)同士をつなぐ電極線が見える。大成建設とカネカは、隣り合うセルを重ねることで、電極線が見えないように工夫した。間近で見れば太陽電池モジュールが確認できるが、少し離れると液晶画面のように均一な黒いガラスパネルに見える。

左がソリッドタイプ、右がシースルータイプのサンプル(写真:日経アーキテクチュア)
左がソリッドタイプ、右がシースルータイプのサンプル(写真:日経アーキテクチュア)
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