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新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けて、空気調和・衛生工学会と日本建築学会の両会長が2020年3月23日に「換気」に関する緊急会⻑談話を発表した。もし、家族や同居人が感染したらどうすればいいのか。空気調和・衛生工学会の田辺新一会長に、疑問をぶつけた。

換気による新型コロナウイルス感染防止策に関する緊急会⻑談話を2020年3月23日に発表した、早稲田大学創造理工学部建築学科の田辺新一教授。18年から空気調和・衛生工学会の会長を務める。写真は18年5月に撮影した(写真:日経クロステック)
換気による新型コロナウイルス感染防止策に関する緊急会⻑談話を2020年3月23日に発表した、早稲田大学創造理工学部建築学科の田辺新一教授。18年から空気調和・衛生工学会の会長を務める。写真は18年5月に撮影した(写真:日経クロステック)
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新型コロナウイルスの感染リスクを減らすには、換気回数をどのくらい確保するのがよいでしょうか。

 大勢の人から聞かれますが、最も回答が難しい質問です。新型コロナウイルスについては最新の知見で、いわゆる“マイクロ飛沫”と呼ぶ細かい飛沫がある程度、空気中を漂って、生存することが分かってきました。空気感染に近い感染経路への対策として「換気」が有効だと考えられますが、分からないことも多い。

 というのも、飛沫感染と接触感染については、感染防止効果を示すエビデンス(科学的根拠)があるのですが、近距離の空気感染については明確なものがないのです。このため、「換気による室温の低下や上昇に注意してできる限り多く」、としか答えようがないのが実情です。

 ただ、自宅で感染の疑いがない家族だけで過ごす場合は、建築基準法が規定する0.5回/h(1時間当たりに部屋の空気の半分が入れ替わること)でよいと考えています。一方、自宅でパーティーを開くなど大人数で食事や会話をする場合は、この程度の換気回数では、政府のいう”三密”の状態になってしまうと思われます。

 ビルやホテルなどの非住宅では、省エネルギーのために換気量を必要最小限に絞り、窓を開けられないことが少なくありません。そんな場合は、換気設備が許す最大風量で運転するようお勧めします。

 換気回数についての一般的な解説は、東京大学の大岡龍三教授が主査を務める日本建築学会環境工学委員会空気環境運営委員会などで用意しましたので、そちらをご覧ください(編集部注:日本建築学会は換気に関するQ&A集を同学会のウェブサイトで公開している)。
(関連記事:建築学会などが「換気」のQ&A集を追加発表、新型コロナ対策で
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感染の疑いのある人が在宅している場合、その部屋はどのように換気したらいいのでしょうか。

 感染の疑いのある人の部屋は、窓を開けて外気を取り入れる自然換気などによって、その室内で換気を完結するのが望ましいでしょう。換気経路(換気を⾏う際に空気の通る道筋)が独立している部屋で過ごすのが望ましいのですが、トイレや浴室、洗面所で機械を使って排気する第3種換気ではこれが難しい。そのため、感染の疑いのある人とない人の生活ゾーンを分け、感染の疑いのある人は換気経路のできるだけ「風下側」の部屋で療養するといいでしょう。感染した人の部屋の空気を、換気経路に通さないためです。

 感染の疑いがある人と同居している家族は、その部屋に長時間いることは避けた方がいい。