札幌市の大通公園に面した場所で、高層木造ハイブリッドホテル開発計画「大通西1丁目プロジェクト(仮称)」が着工した。三菱地所が2020年3月26日に発表。建物は木造と鉄筋コンクリート(RC)造の混構造で、最高高さ45mとする。高層かつホテルの用途で木造ハイブリッド構造を採用するのは国内で初めて。21年夏に竣工、同年秋に開業予定だ。設計・監理は三菱地所設計、施工は清水建設が担当する。
建物は11階建てで、構造は1~7階をRC造、8階をRC造と木造の混構造、9~11階を木造とする。8階より上のフロアは1時間耐火、7階より下のフロアは2時間耐火。延べ面積は約6160m2で、ホテルの客室数は合計130室を予定している。
構造材には約1050m3の木材を使用し、そのうちの約80%を北海道産材でまかなう計画だ。国土交通省の「サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」の補助金を活用する。
木造ハイブリッド構造を採用した背景を、三菱地所広報部の中嶋めぐ実氏は次のようにコメントした。「今後、都市部で木造普及を推進するためには、最もローコストな木材利用方法を開発することが重要になる。特に4~10階建ての建物は、非住宅建築で市場規模が大きい。その規模を狙って技術的工夫を模索することで、広く普及でき、かつ波及効果のある木造化手法の確立を目指した」
さらに同氏は、「計画段階では、商品性と経済合理性のバランスを考慮して検討を進め、最上部3層を純木造にすることが最適だと判断した。だが、敷地形状や容積率などの条件によっては、全層木造とすることも十分に可能だ」と説明する。
純木造とした9~11階の上層部は、床に北海道産のトドマツ材をベースとしたCLT(直交集成板)を使用。そして中規模建物向けに同社がMoNOplan(東京・千代田)と共同開発した工法を採用する。
高層木造の場合は耐力壁に大きな引張力や圧縮力がかかる。それに対応するため、外壁と間仕切り壁に、高耐力の枠組み壁を使う。木造耐力壁の端部をタイダウンと木口連結金物で補強し、それらの力を負担できるようにした。壁倍率は15~25.5程度。また、壁面で荷重を支えるので、柱形や梁(はり)形が出ない形の客室にできるというメリットもある。