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 日建設計と協和エクシオ、WHERE(東京都千代田区)、オムロン、神田通信機の5社は、企業の働き方改革や省エネを支援するため、クラウドを使った設備制御システムや空間デザインで協業する。2020年4月8日に、5社が合意に達したことを発表した。20年10月まで共同実験を進め、同11月以降にサービス提供開始を目指す。

 5社は互いの強みを持ち寄り、建築空間全体を対象にした設備制御の最適化を可能にするシステムの開発と普及を推進する。そのために、センサーや社内ネットワーク、クラウドなどの基盤を整えながら、設備制御システムの開発・運用や空間設計への適用を図る。

 オフィスにいる従業員の位置情報など、様々なデータを収集できる「多用途センサー」を職場に複数設置し、データをクラウドに集約する。そのうえで照明や空調といった複数のオフィス設備を組み合わせ、部屋の明るさや温度・湿度などを、人の居場所と数の変化や、天候や時刻の推移に合わせて最適にコントロールしていく。

 従業員が少なくなれば、照明や空調の利用を人の居る場所に制限するなど、無駄なエネルギー消費を減らす。新型コロナウイルスの感染防止を機に企業でテレワークが進むと、オフィスにいる従業員の数は減る。そうした人数の変化を設備制御システムが感知し、照明や空調の稼働状況を変えていくといった使い方が想定される。

様々なデータを収集できる「多用途センサー」をオフィス空間に設置し、情報をクラウドに集約する。照明や空調など複数の設備を組み合わせ、従業員に働きやすい職場環境を提供(図の右)。同時に職場の省エネに貢献する。従来は各設備をバラバラに制御していたため、機器の稼働は個別最適になっていた(資料:日建設計)
様々なデータを収集できる「多用途センサー」をオフィス空間に設置し、情報をクラウドに集約する。照明や空調など複数の設備を組み合わせ、従業員に働きやすい職場環境を提供(図の右)。同時に職場の省エネに貢献する。従来は各設備をバラバラに制御していたため、機器の稼働は個別最適になっていた(資料:日建設計)
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 最大の狙いは、働きやすいオフィス環境を従業員にリアルタイムで提供して、仕事の生産性を高めることだ。健康にも配慮し、体調管理をしやすくする。同時に、無駄な設備稼働を抑え、省エネに貢献する。

デジタルツインのシミュレーション結果を現実に反映

 これまでは、各設備がそれぞれ個別にセンサーを備えていたり、別々のスイッチで従業員自身が「入/切」や設定温度、風速、向きなどを調整したりと、バラバラに制御するのが一般的だった。

 そこで5社は共同で、建物内に設備制御に必要なセンシング用のIoT(モノのインターネット)ネットワークを張り巡らせる。多数のセンサーやビーコンから得られるデータをクラウドに吸い上げ、異なる設備を統合的に制御する。収集したデータの解析や設備制御への反映には、AI(人工知能)も活用していく。

 制御システムは、様々な設備機器メーカーの製品を統合管理できるようにするため、オープンな規格や仕様を採用する。例えば照明器具は、照明制御の国際標準規格「DALI」に準拠した環境を整える。これで照明設備を一律にコントロールする。

 人感センサーや室温などを感知する環境センサー、人の位置を把握するBluetooth(ブルートゥース)対応のビーコンも用意する。Bluetoothは近距離通信でよく使われる規格だ。オフィスでは、社員証などに付けたBluetoothタグと天井に設置するBluetooth受信機の通信から、従業員の現在地を把握する。

 これらのツールで収集した現実空間のデータを、コンピューター上に構築する「デジタルツイン」に取り込む。デジタルツインとは、現実空間をそっくりそのまま再現した仮想空間で、電子的な双子の意味。ここではバーチャルなオフィス空間を指す。仮想空間内でセンサーデータの解析結果を使った設備制御のシミュレーションを繰り返し、結果を現実のオフィス空間の設備制御に反映していくことを検討している。

協業する5社の役割。各種センサーはオムロン、位置情報を収集するためのBluetooth対応の通信機器やビーコン、タグおよびクラウド環境の構築は協和エクシオとWHERE、照明制御は神田通信機が担当する。これらのシステムを用いたオフィス空間のデザインや設備設計を日建設計が担う(資料:日建設計)
協業する5社の役割。各種センサーはオムロン、位置情報を収集するためのBluetooth対応の通信機器やビーコン、タグおよびクラウド環境の構築は協和エクシオとWHERE、照明制御は神田通信機が担当する。これらのシステムを用いたオフィス空間のデザインや設備設計を日建設計が担う(資料:日建設計)
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