2019年10月に発生した首里城火災。琉球文化の象徴とされる首里城の正殿や南殿、北殿といった中心施設が全焼した。政府は復元に向けて「首里城復元に向けた技術検討委員会」(委員長:高良倉吉・琉球大学名誉教授)を設置。同委員会が取りまとめた報告書を基に、20年3月27日に開催した関係閣僚会議で正殿復元に向けた工程表を決定した。工程表では20年度早期に設計に入り、22年度に着工して26年度までの正殿復元を目指す。
正殿復元に当たっては、「防火対策の強化」と「材料調達の状況の変化などの反映」に力を入れる。防火対策の強化として、(1)再発防止策の徹底、(2)火災の早期発見と迅速な初期消火の徹底、(3)消防隊による消火活動の容易化、(4)消火のための水源の確保、(5)世界遺産の構成資産である首里城跡の保護――の5項目を掲げた。
具体的には、復元する正殿に最先端の自動火災報知設備やスプリンクラーなどを設置する。加えて、城郭内に消火用の水を送る連結送水管設備の導入や貯水槽の増設、消火栓の新設を進める。貯水槽の増設については、世界遺産である首里城の地下遺構の保護を前提に設計・施工する。
火災時には、出火元とみられる正殿にスプリンクラーが設置されておらず、自動火災報知設備の発報が遅れた。警備員が駆け付けた時には正殿内に煙が充満し、初期消火ができなかった。また、首里城は城郭に囲まれた高台に立地しているため、消防車両が進入できず放水開始までに時間を要したという課題も明らかになっていた。対策は、こうした課題を踏まえたものだ。
火災で全焼した北殿や南殿などは、撤去して正殿復元のための施工ヤードとして使用する。正殿の復元作業と並行して再建方法を検討し、復元後に工事に着手する考えだ。