新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)がもたらす景気後退で、建設市場はどうなるのか。建築のコストマネジメントを専門とするサトウファシリティーズコンサルタンツでは、2020年の建築物着工床面積が前年比23%減の9840万m2まで落ち込むと予測している。
新型コロナウイルスの感染拡大で、経済活動が停滞している。内需の柱である個人消費と民間設備投資が大きく落ち込めば、日本経済は深刻な景気後退に陥る恐れがある。これまで好調だった建設市場も、2020年後半から一気に転落しかねない。
08年9月のリーマン・ショックでは、当時の実質GDP(国内総生産)で見た経済成長率が09年にマイナス5.4%となるなど、経済状況が急速に悪化した。民間建設投資は08 年度の31兆5000億円から09年度の25兆円へ、実に2割も減った。
では、今回のコロナ・ショックはどうか。そもそも19年の建築需要(建築物着工床面積)は店舗が前年比18.1%減、工場が12.9%減、事務所が3.5%減といずれも減少していた。同年10月の消費増税の影響もあり、建設市場には陰りが見え始めていた。
そこに、外出自粛や休業要請で経済活動が大幅に制限され、個人消費が影響を受けた。GDPの50%以上を占める家計消費が落ち込んでいる。今後、企業の業績悪化と設備投資の大幅な減少につながっていくだろう。
終息時期は記事執筆時点で見通せないため、正確に予測するには限界があるが、仮に20年6月末に最悪期を脱し、7~9月期にほぼ終息すると仮定してサトウファシリティーズコンサルタンツが試算したところ、20年の建築物着工床面積は前年比23%減の9840万m2となった。これは、リーマン・ショック後の09年の数値を下回る低水準だ。
予測値は、20年4月末までの経済状況を踏まえつつ、リーマン・ショック時のGDPを参考に、経済活動の抑制による景気の悪化を見込んで算出した。以降では、リーマン・ショックとの比較を通して、コロナ・ショックの建築需要への影響を詳しく考察する。