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 建築・都市環境工学の第一人者である建築環境・省エネルギー機構の村上周三理事長は、新型コロナウイルス感染症を巡る状況をどのように見ているのか。「3密(密集、密閉、密接)」対策として換気を促す広報活動に加えて、新たな換気技術の開発やマスクの着用に関する研究を推し進めるべきだと提案する(インタビューは2020年4月28日に実施)。

取材に応じた建築環境・省エネルギー機構の村上周三理事長(写真:本人提供)
取材に応じた建築環境・省エネルギー機構の村上周三理事長(写真:本人提供)
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新型コロナウイルス感染症を巡る混乱を、建築環境学の第一人者としてどのように見ていますか。

 現代の建築・都市の構造は、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)に対して脆弱でした。世界中で都市人口が増えて過密居住が進み、いわゆる3密が発生しやすい生活環境になりました。人々が利便性や経済性、快適性を追求して都市に人口が集中した結果、公衆衛生面の弱さが、思いもよらないパンデミックで浮き彫りになったのではないでしょうか。

 安全な水ときれいな空気は、都市生活の基盤です。ペットボトルを持ち歩けば、どこでも安全な水を飲むことができます。一方、空気はどうでしょう。当たり前ですが、ペットボトルに入れて持ち歩くことなどできませんよね。空気中にウイルスが浮遊しているかもしれないという状態は、危険を避ける方法がないという点で恐怖感をかき立てます。このように、清浄な空気の確保は基本的人権と言ってもいいくらい重要で、まさに公衆衛生の基本といえます。

今後、建築や都市の在り方はどのように変わるのでしょうか。

 建築・都市の計画や運用は、3密を減らす方向に進むでしょうね。有効でかつ着手しやすい方法として、活動の場を現実のフィジカル空間から、デジタル技術を活用したサイバー空間に移行することが考えられます。それは既に始まっていますし、ますます盛んになると思います。

 ただ、サイバー空間への移行が進んでも、対面での情報交流はコミュニティーにとって必須です。地域の絆は、対面での交流によってつくられます。建築・都市の専門家には、3密を減らしながらも対面での交流の機会を維持できる空間や仕組みを提示する責務があると思います。

 思うに、建築関係者は当面、広報活動と研究開発に力を割くべきです。

広報活動とは、どのようなことでしょうか。

 3密の回避に向けて、建築の専門家は換気の重要性や方法を社会に分かりやすく発信していく必要があります。例えば、学校は子どもが大勢集まっており、窓開けを徹底すべきです。また、住宅では換気がおろそかになりがちです。住宅に備え付けられているエアコンには換気機能がないうえに、冷房を効かせようと窓を閉めてしまいがちです。換気しながら冷房することをお勧めします。

 医療施設では、医療従事者を保護するために、空気の流れを考えた換気計画を実行すべきです。空気は圧力の高い空間から低い空間へ流れるため、医療従事者のいる部屋は圧力が高くなるように設計することが大事です。例えば換気扇で空気を外へ送り出せば、その部屋の圧力は低くなります。逆に、換気扇で外の空気を送り込めば、その部屋の圧力は高くなります。