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 2018年の西日本豪雨、19年の東日本台風(台風19号)に続いて大規模な被害をもたらした「令和2年7月豪雨」。激甚化する水害への対応は待ったなしだ。建築の浸水対策は耐震や防耐火と異なり、これまでほとんど取り組まれてこなかったが、日本建築学会がついに重い腰を上げた。

 日本建築学会は2020年6月29日、「激甚化する水害への建築分野の取り組むべき課題~戸建て住宅を中心として~」と題する提言を発表。建築物の耐水技術の開発などが急務だと訴えた。提言は、同学会が18年に設置した「気候災害特別調査委員会」(委員長:佐土原聡・横浜国立大学大学院教授)がまとめた。

日本建築学会は戸建て住宅を中心に、水害に対して建築分野が取り組むべき課題を提言した。耐水性能についての取り組みは未着手だったとして、浸水後の早期復旧につながる設計手法や対策技術の整備が急務だと訴えた(資料:日本建築学会)
日本建築学会は戸建て住宅を中心に、水害に対して建築分野が取り組むべき課題を提言した。耐水性能についての取り組みは未着手だったとして、浸水後の早期復旧につながる設計手法や対策技術の整備が急務だと訴えた(資料:日本建築学会)
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 提言ではまず、「土木の防災施設の整備により水害に対する安全性が確保されているという前提で市街地が形成されてきたが、近年の自然災害の激甚化に伴い、防災施設の対応力を超えてしまう可能性が顕在化しつつある」と指摘。豪雨の頻度や程度が増大していることから、建築や都市・地域計画分野の水害対策に果たす役割が大きくなっているとし、土木分野などと連携して対策を講じる必要があるとした。

 さらに建築物の耐水性能について、耐震性能や防火性能などと異なり「取り組みは未着手である」と明記。水流による荷重や浸水後の耐久性、浸水による断熱性能の劣化や衛生環境の悪化の防止、浸水時の安全確保や機能維持といった様々な分野の知見を持ち寄らなければならないが、そのような取り組みは行われていないと総括した。

 提言では、浸水後の早期復旧につながる設計手法や対策技術の整備を進めるために「実態把握とデータ蓄積」「建築物単体」「都市・地域計画」の3つの視点から取り組むべき課題を示した。

 「実態把握とデータ蓄積」については、水害による建築物や設備の被害、人的被害、復旧の過程や対策の効果などを調査して情報を蓄積することが、具体的な対策を講じるうえで重要だと指摘。特に住宅内での人的被害の原因に関する詳細な調査が必要だとした。