全2834文字
PR

シンガポールが推進するPPVC

 マレーシアで躯体のモジュールを製作後、シンガポールの工場で配管や塗装、防水処理などを施して現場に輸送。1899個のモジュールを1日に10個程度のペースで組み立てた。

 モジュール化と工場生産を取り入れれば、これまで現場で実施していた作業を屋内で進められるので、天候に工期を左右されるリスクを減らせる。現場で基礎工事を進めつつ、工場で躯体を製作するなど、作業を並行して進められるのも強みだ。クレメント・キャノピーでは予定より半年早く完成できたという。

 工期を短縮すれば入居時期を早められるので、デベロッパーのキャッシュフロー改善にもつながる。品質管理も容易になる。現場に大勢の作業員が出入りする必要がないので、安全性も高い。

 クレメント・キャノピーの工法はPPVC(Prefabricated Prefinished Volumetric Construction)と呼ばれ、シンガポール政府が推進している。国が払い下げる土地に住宅を建てる場合、床面積の65%以上に使用する決まりがある。

上は米マリオット・インターナショナルがニューヨーク市内で建設中の「AC Hotel New York NoMad」の完成イメージ。下はこのホテルの客室モジュール。ポーランドの工場で製造した(資料・写真:Danny Forster&Architecture)
上は米マリオット・インターナショナルがニューヨーク市内で建設中の「AC Hotel New York NoMad」の完成イメージ。下はこのホテルの客室モジュール。ポーランドの工場で製造した(資料・写真:Danny Forster&Architecture)
[画像のクリックで拡大表示]

 世界最大のホテルチェーンである米マリオット・インターナショナルも、モジュール方式を採用した26階建てのホテルを、6500万ドル(約70億円)を投じてニューヨーク市内に建設中だ。PPVCと同様、工場でトイレや浴室の設置、内外装の仕上げを施した鉄骨造の客室モジュールを現場に輸送し、タワークレーンを使用して90日間で積み上げる。

 モジュール化を大胆に取り入れ、ITを活用して急成長を目指す──。建設産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を体現する企業として、世界で最も注目を集める建設会社が米Katerra(カテラ)だ。

 同社は18年にソフトバンク・ビジョン・ファンドが8億6500万ドル(約930億円)の投資を表明し、知名度を高めた。マッキンゼーのリポートも、カテラを強く意識している。

 「建設業界を再定義するテクノロジー企業」を自認するカテラと、従来の建設会社の違いは、元請けと下請けから成る分業体制ではなく、企画・設計、モジュール化した部材の製造、現場での施工までをワンストップで提供する垂直統合モデルを採用した点にある。各段階で多様なプレーヤーが関わることで生じる無駄を排除し、競争力を高めようとしている。