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ソフトバンクが投資したカテラ、分業から垂直統合へ

垂直統合モデルを採用する米カテラ(写真:Katerra)
垂直統合モデルを採用する米カテラ(写真:Katerra)
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 カテラは建物の構造部材や窓、浴室などをモジュール化。自社工場で製造し、現場で組み立てる生産方式を実践している。米カリフォルニア州トレーシーの基幹工場には、壁や屋根トラス、窓などを自動で製造する生産ラインを設けた。同社の製造責任者であるマット・ライアン氏は「30台の固定ロボット、12 台の移動ロボット、および無人搬送車を使用したデジタル製造プロセスが特徴だ」と説明する。

 カテラがとりわけ力を入れるのが、持続可能な構造材料として日本でも普及が進むCLT(直交集成板)。19年9月には北米最大の生産量を誇るCLT工場を米ワシントン州スポケーンバレーにオープンさせた。

米カテラがワシントン州スポケーンバレーに完成させた延べ約2万5000m2のCLT工場(写真:Katerra)
米カテラがワシントン州スポケーンバレーに完成させた延べ約2万5000m2のCLT工場(写真:Katerra)
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 極め付きは、自社の垂直統合モデルを踏まえて建設会社向けに商用サービス化した「Katerra Apollo(アポロ)」と呼ぶデジタルプラットフォームだ。19年2月に発表した。

 設計や施工などプロジェクトの一部ではなく、計画段階から竣工後まで、サプライチェーン全体のコストや工程などを一貫して管理し、生産性を高められるとの触れ込み。プロジェクトの初期段階で資金計画や実現可能性などを検証する機能や、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)のデータを基に見積もりを自動作成し、サプライチェーンに関わるメンバーに共有する機能などを備える。

 カテラが採用した垂直統合モデルは、日本のゼネコンが過去に捨て去ったビジネスモデルだ。ただし、元請けと下請けから成る分業体制が、建設サービスのコモディティー化(付加価値を失い、どの企業のサービスも大差なくなること)を招いたとの指摘は以前からあった。建設経済研究所はリーマン・ショックの影響で景気が大幅に悪化していた09年6月のリポートで、次のように述べている。

 「他社と製品(サービス)の質(バリュー)を差別化できないバリューチェーンの均質化を招く構造的問題を持った分業生産体制を抜本から見直してみてもよい時期にきているのではないかと思われる」

 当時より人手不足が進行し、新型コロナウイルスの感染拡大でリーマン・ショック時と似た厳しい経営環境になりつつある今、カテラのような新興企業の台頭は、日本のゼネコンにとって示唆に富む。