全1052文字
PR

 国土交通省は2020年7月14日の社会資本整備審議会建築分科会建築物等事故・災害対策部会(部会長:深尾精一・首都大学東京名誉教授)で、19年の房総半島台風による屋根被害を踏まえた建築物の強風対策案を示した。この台風で大きな被害を受けた瓦屋根については、建築基準法の告示基準を改正する方針だ。

2019年の房総半島台風による住宅被害が大きかった千葉県鋸南町岩井袋地区。海岸沿いに位置する。多くの住宅の屋根や外壁が破損し、街がブルーシートで埋め尽くされていた(写真:日経アーキテクチュア)
2019年の房総半島台風による住宅被害が大きかった千葉県鋸南町岩井袋地区。海岸沿いに位置する。多くの住宅の屋根や外壁が破損し、街がブルーシートで埋め尽くされていた(写真:日経アーキテクチュア)
[画像のクリックで拡大表示]

 国交省は瓦屋根について、現行よりも耐風性の高い工法を告示基準にする考えだ。具体的には、全日本瓦工事業連盟と全国陶器瓦工業組合連合会、全国厚形スレート組合連合会の3団体が定めた「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」の工法を告示に位置付け、新築時や屋根をふき替える際に義務付ける。増改築する建物の既存部分には遡及適用しない方針だ。

 同ガイドラインの特徴は、原則として全ての瓦を緊結するよう求めている点だ。現行の告示基準では、軒やけらばの瓦を緊結するよう求めているものの、棟部は1枚おきに緊結するだけでよく、平部の瓦に関しては規定が存在しない。

 現行の告示基準とは緊結方法も異なる。ガイドラインでは、軒やけらばについては1枚の瓦をねじと2本のくぎで、棟部はねじで緊結して強度を高めている。平部にはくぎで緊結する方法などを用いる。一方、現行の告示基準では、軒やけらば、棟部をねじよりも強度の低いくぎや鉄線、銅線などで緊結することとしている。

現行の建築基準法の告示基準と瓦屋根標準設計・施工ガイドラインの比較。同ガイドラインは、告示基準よりも耐風性が高い緊結方法を採用している(資料:国土交通省)
現行の建築基準法の告示基準と瓦屋根標準設計・施工ガイドラインの比較。同ガイドラインは、告示基準よりも耐風性が高い緊結方法を採用している(資料:国土交通省)
[画像のクリックで拡大表示]

 房総半島台風では、告示基準で緊結対象となっていない箇所に被害が多く発生した。一方、ガイドラインに沿って施工した瓦屋根は、風圧力による脱落が少ない傾向があった。

 ただし、ガイドラインの工法を用いた屋根でも、沿岸部の局所的な強風によって瓦が脱落するケースはあった。沿岸部の住宅では、小屋組みや野地板が剥がれる被害なども発生した。このため国交省は、沿岸部向けの対策として、国交省国土技術政策総合研究所による試験などを踏まえて屋根ふき材や小屋組みの緊結方法を検討する方針だ。住宅性能表示制度の耐風等級を見直し、屋根ふき材に関する等級の追加を検討する案も示した。

 同省はこのほか、屋根ふき材の改修などに関する支援制度を周知したり、最新の気象データの分析に基づき、現行の建築基準法で定めている基準風速の妥当性を検証したりする方針を示した。

 部会では国交省の方針に目立った異論は上がらなかったが、専門委員を務める日本規格協会執行役員の伊藤弘規格品質管理ユニット長は、「一般の人の目線からすると、風だけでなく地震の対策になっているかも重要だ。両方の視点を検討して対策を進めてほしい」と注文した。