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 リノベーションのパイオニアとして知られるブルースタジオ(東京・中野)が2020年4月1日、福岡オフィス「SOUQ(スーク)」を福岡市内に開設した。同社初の地方拠点だ。東京で実績を積んだスタッフがマネジャーを務める。7月17日に現地で行った開設記念トークイベントで大島芳彦専務が、福岡進出の狙いと、ポストコロナ時代の地方都市におけるまちづくりの可能性を語った。

ブルースタジオ福岡オフィス「SOUQ」開設イベントの様子。中央がブルースタジオの大島芳彦専務、右がオフィスの大家であるスペースRデザイン/吉原住宅(福岡市)の吉原勝己代表。左は司会を務めたまちづくり会社KISYABAREE(キシャバリー、鹿児島市)の須部貴之代表(写真:萩原 詩子)
ブルースタジオ福岡オフィス「SOUQ」開設イベントの様子。中央がブルースタジオの大島芳彦専務、右がオフィスの大家であるスペースRデザイン/吉原住宅(福岡市)の吉原勝己代表。左は司会を務めたまちづくり会社KISYABAREE(キシャバリー、鹿児島市)の須部貴之代表(写真:萩原 詩子)
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 大島氏はもともと九州との関わりが深い。北九州市で11年7月にスタートしたリノベーションスクールは、これまでに福岡県飯塚市、佐賀県伊万里市、長崎県佐世保市、宮崎県都城市、鹿児島市……と、九州各地で開催してきた。ブルースタジオとしては、鹿児島県鹿屋市の廃校をリノベーションし、18年7月にオープンした「ユクサおおすみ海の学校」の企画・設計を手掛け、現地法人を立ち上げて運営にも携わっている。

 「九州ではこれまでも、官民双方から数多くのリノベーションやまちづくりに関する相談が寄せられたが、残念ながらなかなか対応できなかった。福岡に拠点があれば、九州内はもちろん、中国地方や東アジアとも行き来しやすい」と大島氏。現在、韓国の釜山や済州島でもリノベーションスクールを開催しているという。

SOUQの内観。常駐スタッフ2人のデスクのほか、奥にシェアオフィスを2席設けた(写真:ブルースタジオ)
SOUQの内観。常駐スタッフ2人のデスクのほか、奥にシェアオフィスを2席設けた(写真:ブルースタジオ)
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 「少子高齢化、人口減少が進む九州は、社会課題の先進地と見ることができる」と大島氏は言う。九州の各都市にとって、地域活性化や不動産活用のニーズは切実だ。そこへ来て、このコロナ禍が社会変容を迫ろうとしている。

 「コロナ禍で目に見えて変化したのは働き方だ。テレワークが急速に普及したことによって、暮らしの中に仕事が入り込んできた。建築・不動産の視点では、『場』の認識が急激に変化したと見ることができる。『暮らしの場』に『働く場』が内在化した。これによって都心のオフィスに通勤する必要がなくなったことは、地方都市や都市郊外が見直されるチャンスといえる」

 一方、暮らしの場に働く場が内在することで、住宅の課題も明らかになった。日本の家は、そもそも仕事ができるようなつくりになっていない。かといって、日本の住宅事情が急に改善できるわけがない。

 「解決策として考えられるのは、生活圏に家のエクステンション(機能拡張)を持つことだ。例えば、自宅から歩いて行けるところに働く場を持つ。食事をテークアウトすることは、キッチンのエクステンションを持つことともいえる。家の概念が、家の壁を越えて広がる。家の概念を変えなければ、ポストコロナの社会に対応できないと、皆が直感的に理解したはずだ」

 ブルースタジオが企画・設計・プロモーションを手掛け、19年5月に開業した「ネスティングパーク黒川」(川崎市)は、偶然にもその課題を先取りした。事業主は小田急電鉄。小田急多摩線黒川駅の駅前に建設した木造平屋の複合施設だ。

「ネスティングパーク黒川」全景。駅前広場を囲んで小屋型の建物を並べた。「向こう10~20年程度の、暫定的な活用法ともいえる」と大島氏(写真:千葉 顕弥)
「ネスティングパーク黒川」全景。駅前広場を囲んで小屋型の建物を並べた。「向こう10~20年程度の、暫定的な活用法ともいえる」と大島氏(写真:千葉 顕弥)
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 黒川駅は1970年代に開業し、周辺に宅地が開発された。その頃に流入した団塊世代が、今は高齢に達している。開発当初は駅前にあった商業施設は取り壊され、30年以上も空き地のまま放置されていた。その一方で、近年は子育て世代も移り住んでいるものの、団塊世代との間には断絶がある。

 ブルースタジオは「定年を迎えた団塊世代も、子育て中の女性たちも、自宅の近くに『働く場』があれば起業にチャレンジしたくなるのではないか」という仮説を立てた。ネスティングパーク黒川の核は、6~8m2の個室と1坪程度のブース、デスク貸しのコワーキングスペースから成るシェアオフィスだ。

 「狙い通り、それまで自宅でネットショップや教室を開いていた人たちが喜んで借りてくれた。その中には子育て中の女性もいれば、60歳代の女性もいる。郊外の自宅のエクステンションとしての『働く場』に、ニーズがあることが確認できた。コロナ禍が新たな状況を生んだのではなく、潜在していたニーズが顕在化したと捉えている」