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 日本木造住宅産業協会(木住協)は、木造軸組み工法向けで壁倍率換算が最大19.2倍相当となる高強度な耐力壁を開発し、一般公開した。木住協が開く講習会に参加すれば非会員でも利用可能だ。

 耐力壁当たりの構造耐力が高まれば、耐震性を確保しながら大空間を実現できる。木造は近年、住宅との複合施設や商業施設といった中大規模建築物でも採用されており、さらに用途を広げる狙いがある。

 公開した耐力壁は合計9仕様(下の表)で、国土交通大臣認定が1仕様と構造評定取得が8仕様だ。部材はすべて一般流通品を用いる前提で、接合補強金物も含め、構造計算に基づいて設計者が決定できる。

〔図1〕高強度な独自の「高耐力耐力壁」9仕様をオープン化
〔図1〕高強度な独自の「高耐力耐力壁」9仕様をオープン化
木住協がオープン化した9仕様の「高耐力耐力壁」一覧。厚さ24mmの構造用合板など国内でも手に入りやすい一般材料を使っているのが特徴だ。横架材間の内寸(構造用合板の長さ)が最長3.6mになる仕様もあり、1層当たりの階高を稼げる。図の仕様名で、かっこ内は木住協の呼称(*注1)。壁倍率は換算値(*注2)。構造評定仕様「C-12-w」「D-12-w」の「MPW」とは、カナダで開発された「Midply Wall System」の略称(*注3)。構造用面材を枠組み材で補強したうえで柱と横架材に真壁としてくぎ留めする技術で、2019年3月、カナダ林産業審議会(COFI)が壁倍率5倍となる構造評定を取得している(資料:日本木造住宅産業協会の資料を基に日経クロステックが作成)
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 このうち4号建築物の壁量計算にも適用可能なのが大臣認定を取得した「構造用合板12mm片面張り真壁」(木住協の仕様呼称B-12-s5)だ。壁倍率は4.8倍で、2020年7月に認定を取得した。厚さ12mmの構造用合板を真壁として、柱と横架材へ受け材を介して留め付ける工法となっている。

 建築基準法は壁量計算で、1柱間の耐力壁が負担できるのは5倍までと規定している。この制限を超えるため、木住協は大臣認定のほか、許容応力度等計算法(ルート2)による構造計算を前提とした性能評価にも取り組み、20年3月に同計算法で使える構造評定を取得した。性能評価者は指定性能評価機関のベターリビングだ。木住協はこの評定も大臣認定と同時にオープン化した。

 構造評定を取得した8仕様には大壁と真壁があり、要求性能や収まりによって選択できる。耐力は真壁仕様の方が高い。構造体が地震力で変形した際、構造用合板が柱や梁(はり)にめり込む形となって抵抗力が増し、性能が上がるからだ。

〔写真1〕真壁仕様は変形しにくい
〔写真1〕真壁仕様は変形しにくい
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〔写真1〕真壁仕様は変形しにくい
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地震力(水平力)にどれだけ耐えられるかを確認した性能評価試験の終局の様子。写真はいずれも真壁耐力壁の試験体で、左は壁の内寸910mm、右は同じく1820mmとしたもの。合板が柱や壁に突っ張り、変形を抑制している(写真:日本木造住宅産業協会)

 構造評定取得8仕様のうち、最も耐力が最も高い「構造用合板24mm両面張り真壁」(同B-24-w)は短期許容せん断耐力が37.6kN/mで、壁倍率19.2倍相当。柱の断面寸法および横架材の厚みを15cm以上とし、厚さ24mmの構造用合板2枚を真壁として柱間に留め付ける仕様だ。

 木住協は2時間耐火構造の国土交通大臣認定も17年から講習会受講を条件としてオープン化している。今回の耐力壁9仕様はその続編と言えるものだと説明する。「大臣認定により、防火地域でも木造5階建てが建築可能となったが、構造側が追い付いていなかった。試設計の結果、壁倍率換算で約20倍の耐力壁があれば、防火地域における5階建て共同住宅といった中層建築も木造で実現できることが分かっていた」。木住協の高橋雅司技術開発部長は、このように説明する。

 木住協は今後、意匠設計者も含め、多くの建築関係者への普及を目指す。構造計算の方法や設計・施工時のチェックポイントをまとめた解説書「木造軸組工法による高耐力耐力壁(木住協仕様)活用マニュアル」をまとめ、これをテキストに20年7月から講習会を東京・大阪・名古屋の3都市でスタート。9月にも東京と大阪で開催予定だ。10月以降はオンラインセミナーの実施も計画している。

■変更履歴
第5段落で、初出時の「許容応力度計算法(ルート1)」の記載を「許容応力度等計算法(ルート2)」に訂正しました。本文は修正済みです。

[2020/09/07 15:20]