レオパレス21の施工不備問題を巡り、岐阜市のアパート所有者が同社に補修費など約2000万円の損害賠償を求めた裁判で、岐阜地方裁判所は2020年8月26日、原告側の訴えを棄却する判決を下した。問題となった共同住宅は提訴時点で築20年を超えていたことから、判決は原告には「請求権がない」とした。原告は控訴する方針だ。
原告の所有者は1994年にレオパレス21と建築工事請負契約を締結、翌95年に2棟の2階建てアパートの引き渡しを受けた。2018年3月、原告側が実施した調査により、この2棟は当初から小屋裏へ界壁が施工されていなかったことが発覚した。この調査が同社による一連の施工不備問題が明るみに出るきっかけだった。原告側が提訴に踏み切ったのは18年8月。2棟は築23年に達していた。
裁判で争点となったのが、引き渡しから20年以上が経過しても、所有者は設計者や施工者へ法的な責任追及が可能なのかだ。
判決によると、被告のレオパレス21は裁判で、物件の小屋裏などの施工状況については「原告の指摘の通り」だと認めている。一方、2棟は提訴時点で引き渡しから20年を超えており、契約上の瑕疵(かし)担保責任期間(最長10年間)、不法行為責任の除斥期間(最長20年間)が経過しているので、「原告側の損害賠償請求権は消滅している」と反論して争った。
責任期間の起算点をどこに置くかについて、原告側は「施工不良は不当に隠蔽されていた。18年の調査で事態が発覚した時点とすべきだ」と主張した。炭鉱労働者のじん肺被害を巡る判例(筑豊じん肺訴訟、最高裁判所04年4月27日判決)が示した、不法行為責任の起算点を巡る考え方をベースにしたものだ。
一方のレオパレス21側は、これまで数多く争われてきた一般的な建築訴訟と同様、起算点は「建物の引き渡し時点」だと主張した。
法違反の判断には踏み込まず
岐阜地裁は原告の主張について、根拠とした判例は「蓄積進行性または遅発性の健康被害に関わる損害」を扱ったもので、建物の施工不備は事件の性質や類型が異なるので、その類型に該当しないのは明白だと指摘。「建物の引き渡し日を除斥期間の起算点と解すべきだ。不法行為責任が仮に生じていたとしても、その損害賠償請求権は除斥期間の経過により消滅した」との判断を示した。
背景にあったのはレオパレス21が全国で進めている施工不備物件の改修作業だ。判決は判断理由について、「被告が界壁の不備を積極的に隠蔽したことはなく、自ら建築基準法違反の可能性を認めて本件訴訟の行く末を問わず補修する方針を示している。損害賠償請求権について除斥期間の適用を制限すべき特段の事情はない」と説明している。
判決はこうして、責任を問えるかのみを判断し、2棟における瑕疵の有無、不法行為責任の成否などの争点については事実認定や判断をしなかった。
同社は20年8月26日の判決言い渡し後、報道機関へ「当社の主張が裁判所へ認められた結果であると認識しております」とのコメントを出した。