全1249文字
PR

 三菱地所設計が設計した「ゼロ動線病棟」が、「病院」としては国内で初めて特許庁から意匠登録を受けた。2列に配した病室の間にスタッフステーション(SS)を置き、フロア外周に共用廊下を設ける形だ。登録日は2020年10月27日で、登録番号は第1672637号。同社が11月18日に発表した。新規性や創作非容易性などの審査には、大林組の特許「感染症対応型施設」(公開番号は特開2010-47940)が参照された。

三菱地所設計が設計した「ゼロ動線病棟」のイメージ。図は、実際に採用した「キラメキテラス ヘルスケアホスピタル」の敷地形状に合わせて、左側が広がった平面となっている(資料:三菱地所設計)
三菱地所設計が設計した「ゼロ動線病棟」のイメージ。図は、実際に採用した「キラメキテラス ヘルスケアホスピタル」の敷地形状に合わせて、左側が広がった平面となっている(資料:三菱地所設計)
[画像のクリックで拡大表示]

 三菱地所設計R&D推進部の正木寧氏は、「20年4月に改正意匠法が施行され、建築意匠の新規性やオリジナリティーが公的に認められるようになった。慢性期病院や療養型病院の需要はますます大きくなると考えられ、一般的な病院建築に捉われない新しい視点の設計の必要性を感じている。今後の社会に与えるインパクトの大きさを鑑み、ゼロ動線病棟の意匠登録を目指した」と語る。

病院の病室と廊下、スタッフステーションの部分について意匠登録を受けた。登録された斜視図(資料:三菱地所設計)
病院の病室と廊下、スタッフステーションの部分について意匠登録を受けた。登録された斜視図(資料:三菱地所設計)
[画像のクリックで拡大表示]
登録された平面図(資料:三菱地所設計)
登録された平面図(資料:三菱地所設計)
[画像のクリックで拡大表示]

 ゼロ動線病棟の特徴は、医療スタッフの看護動線と、患者や見舞客などの一般動線を分離できることにある。三菱地所設計が設計し、21年2月に開院予定の「キラメキテラス ヘルスケアホスピタル」(鹿児島市)で実際に採用している。

鹿児島市で建設中の「キラメキテラス ヘルスケアホスピタル」完成イメージ。21年2月1日に開院予定(資料:三菱地所設計)
鹿児島市で建設中の「キラメキテラス ヘルスケアホスピタル」完成イメージ。21年2月1日に開院予定(資料:三菱地所設計)
[画像のクリックで拡大表示]

 従来の病棟は居住性確保のため、外部に面するよう窓際に病室を置くことが多い。ゼロ動線病棟では、建築基準法施行令20条2項の規定、いわゆる縁側採光の規定を病院に用いることで、法的な採光規定を満たしつつ、通常ならば外部としていた部分に「縁側廊下」と名付けた共用廊下を設ける。縁側廊下は、患者や見舞客が行き来する一般動線として使う。

従来の一般的な病棟と、ゼロ動線病棟の平面計画を比較した図。一般動線と看護動線がなるべく交わらず、かつ効率的な看護動線も実現できる(資料:三菱地所設計)
従来の一般的な病棟と、ゼロ動線病棟の平面計画を比較した図。一般動線と看護動線がなるべく交わらず、かつ効率的な看護動線も実現できる(資料:三菱地所設計)
[画像のクリックで拡大表示]

 一方、2列の病室の間を全てSSとし、医療スタッフがSSから病室に直接出入りできるようにする。そうすることで看護動線を“ゼロ”にして効率化を図り、一般動線と交わる部分も最小限に抑える。

 ゼロ動線病棟を導入したキラメキテラスの場合、縁側廊下の最大幅は約2.5m、SSは最大幅約3.5mで構成している。設計を担当した三菱地所設計建築設計二部の齊藤祐仁氏は、「建築基準法上、避難経路や廊下としてみなすのは縁側廊下。病室の移し替えで患者をベッドごと搬出入する場合なども想定し、広めの幅を確保した」と説明する。