全1048文字
世界各国で新型コロナウイルスが猛威を振るう中、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催予定の「2020年ドバイ国際博覧会」(ドバイ万博、名称は変更なし)は着々と準備が進んでいる。「日本館」建設の進捗状況が20年12月11日に明らかになった。
アラブ首長国連邦で建設中のドバイ万博「日本館」。2020年12月に現地写真が公開された(写真:永山祐子建築設計、20年11月28日時点)
[画像のクリックで拡大表示]
建物の特徴である白いファサードは完成している(写真:永山祐子建築設計、20年11月29日時点)
[画像のクリックで拡大表示]
ドバイ万博は当初、20年10月に開幕する予定だった。日本館は19年8月に起工。コロナ禍で会期は21年10月~22年3月へと延期になったが、建築工事は継続していた。日本政府は20年11月末時点で、建物を覆う「白い膜」のようなファサードや諸室の内装仕上げは既に完成したと発表した。
日本館の建築設計は永山祐子建築設計(東京・新宿)とNTTファシリティーズ、施工は大林組のグループ会社である大林ミドルイースト(UAE)が担当している。建物は地上2階建てで、延べ面積は約3200m2、構造は鉄骨造だ。
永山祐子建築設計の永山祐子主宰は、20年11月末に約1年ぶりに現地入りした。「コロナ禍に、遠い中東の地での建築でありながら、日本館の特徴が実現できていることを自分の目で確認できた」と安堵する。
永山氏が設計したファサードは、中東のアラベスク文様と日本の麻の葉文様を組み合わせたデザインを採用している。日本の折り紙のようにも見える。3次元の立体格子とテント膜で構成し、水の気化熱を利用して環境を調節する設備システムを兼ねている。
日本館の建設現場を約1年ぶりに訪れた永山祐子氏。コロナ禍で渡航が困難になり、出来上がりや進捗が気になっていた(写真:永山祐子建築設計、20年11月28日時点)
[画像のクリックで拡大表示]
施工者の大林組は「各国からドバイに集まった現場担当者の、ウイルス感染防止を第一に考えながら工事を進めてきた」とコメントしている。
大林組グループの大林ミドルイーストが施工を担当(写真:永山祐子建築設計、20年11月28日時点)
[画像のクリックで拡大表示]
ここからは、永山祐子建築設計から日経クロステックが入手した現地写真を通して、日本館の建設状況を見ていく。
日本館の正面入り口に立つ永山氏。ファサードを構成する膜は一つひとつのサイズがかなり大きいことが分かる(写真:永山祐子建築設計、20年11月28日時点)
[画像のクリックで拡大表示]
正面入り口(写真左側)から入って左側にある長いスロープ(写真の通路奥)に向かう(写真:永山祐子建築設計、20年11月30日時点)
[画像のクリックで拡大表示]
建物の地上2階に続く、吹き抜け空間のスロープ。来館者はこの場所で待機しながら、スロープを通って建物の2階に進むことになる(写真:永山祐子建築設計、20年11月29日時点)
[画像のクリックで拡大表示]
両側にガラスの手すりがあるスロープを上り、日本館の建物に向かう永山氏(写真:永山祐子建築設計、20年11月29日時点)
[画像のクリックで拡大表示]
スロープを背にする永山氏。ファサードがスロープ全体を包み込む。白い膜は青空に映える(写真:永山祐子建築設計、20年11月29日時点)
[画像のクリックで拡大表示]
白いファサードは暑い日差しを遮り、風通しを良くする役目がある。ただし、永山氏がこだわったのは「柔らかさ」。建物を1枚の大きな膜で覆うのではなく、小さな膜が何枚も集まって全体を包み、風で細かく揺れ動く涼し気なファサードを考案した。
建物の裏手を見上げた様子。どの方向からも風が抜け、膜がそよぐことで「柔らかさ」を醸し出すことを狙った(写真:永山祐子建築設計、20年11月29日時点)
[画像のクリックで拡大表示]