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 中大規模木造のプロジェクトが広がりを見せるなか、厳密な構造計算に対応する構造材を使う必要から、日本農林規格(JAS)の構造用製材(以下、JAS製材)にもじわりと注目が集まっている。その一方、JAS認証の取得・維持に要する費用負担といった点から、中小零細の製材事業者では認証取得が進まない現状がある。

 農林水産省は2021年1月15日、非住宅を中心とした中大規模木造などでのニーズ拡大を背景に挙げ、各都道府県の木材産業関係課長宛に「製材所の連携によるJAS工場認証について(周知依頼)」と題する通知を発出。現行制度の枠組みでも、中小零細事業者が複数で協同組合を組成するなどして「JAS工場」の認証が取得できる手法を各地で周知してもらう狙いだ。都道府県担当者を集めた林野庁のブロック会議などでも広報するとしている。

農林水産省が示した中小製材事業者の連携によるJAS認証取得のタイプ例。2021年1月15日付で発出した通知で示した(資料:農林水産省)
農林水産省が示した中小製材事業者の連携によるJAS認証取得のタイプ例。2021年1月15日付で発出した通知で示した(資料:農林水産省)
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 この通知の発端は、河野太郎規制改革相の直轄チームに三重県が寄せた要望だった。「小規模な製材事業者がグループでJAS認証を取得できるように制度を見直してほしい」という内容で、同チームの要請を踏まえて農水省が検討。ポイントは、認証取得について定めた「日本農林規格等に関する法律」の第10条だ。同条は「工場または事業所ごとの認証が必要」と規定しているが、同省は、「現行制度でも『工場または事業所ごと』はグループと解釈することが可能で、過去にも組合形式などでの認証取得例がある」とする見解を示した。

 現行制度でも可能な取り組み手法なのに、事業者に伝わっていない――。近年は自治体庁舎など、地域の公共建築物で地元産のJAS製材を採用するプロジェクトなどが、各地で目立ち始めている。こうした例では、1本ずつヤング係数を計測した機械等級区分の製材ニーズが高い。しかし、JAS製材を供給できる認証工場は、全国の製材工場の1割程度。事実上、頭打ちの状況だ。

 地域の中小事業者に認証取得を広げなければ、JAS製材の普及促進は望めない。「解釈で可能」と改めて周知した狙いはここにある。河野規制改革相は通知の発出と同日、自身のブログで一連の経緯に触れ、次のように記している。「こうした解釈ができると明記した文章はないため、誰もそう読むということを知りません」

機械等級区分のJAS製材。ヤング係数を1本ずつ計測して刻印する。厳密な構造計算が求められる中大規模木造の裾野拡大を背景にJAS製材にも注目が集まり始めている(写真提供:小泉木材)
機械等級区分のJAS製材。ヤング係数を1本ずつ計測して刻印する。厳密な構造計算が求められる中大規模木造の裾野拡大を背景にJAS製材にも注目が集まり始めている(写真提供:小泉木材)
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