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 大手広告会社の電通グループが、東京・港にある本社ビルの売却を検討している。同社は2021年1月20日、包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直しなどの一環によるものだと発表した。本社ビルの売却で、建物の長期修繕やテナント管理などのコスト縮減を図り、業務のデジタル化やワークスタイルの変化にも対応しやすくすることが狙いだ。

電通本社ビルの正面入り口前(写真:日経アーキテクチュア)
電通本社ビルの正面入り口前(写真:日経アーキテクチュア)
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 電通本社ビルは02年に華々しく完成した超高層ビルだ。大林組が設計を手掛け、フランスの建築家ジャン・ヌーベル氏がデザインパートナーとして参画した。地下5階・地上48階建てで、高さは210m。上空から見下ろすと、南側と東側に曲面を描くブーメランのような形をしている。低層部と高層部の一部に商業施設や劇場、ホールがある。

 電通が、その本社ビル売却を検討するうえで前提としているのが「セール・アンド・リースバック」の活用。企業が所有、使用している建物を売却した後、買い主から期間を定めて借り戻す(リースバック)というスキームだ。売却した企業にとっては、建物の使用を続けたまま資金の調達や活用ができるというメリットがある。

 電通グループのコーポレートコミュニケーションオフィスでエグゼクティブ・ディレクターを務める河南周作氏によると、本社ビルの簿価は1840億円。売却額は3000億円規模とされる。電通は検討のために複数の企業からアドバイスや提案を受けており、その過程で、優先交渉先企業として不動産大手のヒューリックの名が報道された。

 河南エグゼクティブ・ディレクターは、「現時点で電通として決定した事項は何もない。今後の事業環境を見据え、オフィスの在り方や働き方の見直しと並行して検討を進めていく」としている。

電通グループの本社や商業施設「カレッタ汐留」などが入る「電通本社ビル」(写真:日経アーキテクチュア)
電通グループの本社や商業施設「カレッタ汐留」などが入る「電通本社ビル」(写真:日経アーキテクチュア)
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 本社売却に動き出した背景には、コロナ禍で加速した「オフィス改革」がある。20年2月から、電通本社ビルに勤務するグループ社員9000人超がテレワークを実施。テレワーク導入後の出社率は3割以下で今も推移している。

 また、オフィスの分散化も進んだ。移動時の感染リスクを減らすことや、取引先への対応などの業務効率化を図るため、20年夏から試験的にサテライトオフィスを複数借りている。サテライトオフィスを利用した社員の要望を聞きながら、場所や規模の見直しなども進めている。

 本社ビルの売却を進めるに当たって電通は今後、そうしたオフィス改革の状況も考慮に入れつつ、建物のうちどれぐらいの範囲を使い続けるか、リースバックの期間を何年に設定するかなどの詳細を、交渉先企業と詰めていく予定だ。