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 政府が2021年2月2日に閣議決定した「流域治水関連法案」。浸水被害のリスクが高い地域を指定し、住宅や高齢者施設の建設を許可制とする制度の創設などを盛り込んだ。特定都市河川浸水被害対策法(以下、特定都市河川法)や都市計画法、建築基準法など9つの法律を改正し、国や自治体、企業、住民などが協働して取り組む「流域治水」の実効性を高める。

政府が掲げる「流域治水」のイメージ。浸水被害防止区域や貯留機能保全区域の創設、ハザードマップの作成義務付け対象の拡大といった計画・体制の強化を図ることで、官民が共同して取り組む流域治水の実効性を高める(資料:国土交通省)
政府が掲げる「流域治水」のイメージ。浸水被害防止区域や貯留機能保全区域の創設、ハザードマップの作成義務付け対象の拡大といった計画・体制の強化を図ることで、官民が共同して取り組む流域治水の実効性を高める(資料:国土交通省)
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 関連法案の目玉は、特定都市河川法の改正による「浸水被害防止区域」制度の創設だ。都道府県知事が「流域水害対策計画」に基づき、洪水や雨水出水(内水氾濫)で建築物が損壊・浸水するなど著しい被害が発生する恐れがある区域を指定する。流域水害対策計画とは、流域全体で総合的な浸水対策を進めるために、河川管理者や下水道管理者、都道府県知事、市町村長が共同で作成する計画だ。

 浸水被害防止区域内では、高齢者施設などの要配慮者利用施設や自己居住用を除く住宅といった「制限用途」の建物を建てる土地の開発行為をする際は、事前に都道府県知事などの許可が必要になる。

 例えば、盛り土や切り土といった開発行為をする事業者は、都道府県知事などに開発区域の位置や規模、工事計画などを提出しなければならない。申請時に用途が決まっていない場合は、制限用途の建築物として扱う。

 申請を受けた都道府県知事などは、「擁壁を設置するか」「洪水などが発生した場合でも地盤が削られずに土地の安全性を確保できるか」といった項目について、国土交通省令の技術的基準を満たしているか確認する。基準は改正特定都市河川法の公布から6カ月以内に新たに定める。

 許可を受けた事業者に対しては、工事完了後の届け出も義務付ける。届け出を受けた都道府県知事などは、計画通りに工事が完了したかどうかを検査し、事業者に検査済み証を交付する。

2020年の「令和2年7月豪雨」で浸水し、入居者14人が死亡した熊本県球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」(写真:日経クロステック)
2020年の「令和2年7月豪雨」で浸水し、入居者14人が死亡した熊本県球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」(写真:日経クロステック)
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 浸水被害防止区域で建築行為をする際も許可が必要だ。敷地の位置や建築物の構造、居室の床面の高さなどを記載した申請書と、国土交通省令で定める図書を都道府県知事などに事前に提出する。許可を要するのは、住宅や要配慮者利用施設などを建てる場合と、既存建物の用途をこれらの用途に変更する場合だ。

 申請を受けた都道府県知事などは、「洪水や雨水出水に対して安全な構造か」「居室の床面が基準水位以上か」といった項目を確認。国土交通省令などで定めた基準を満たす場合に許可証を交付する。

 国交省水管理・国土保全局水政課の米田翔一企画専門官は「開発許可や建築確認もこれまで通り必要なので注意してほしい」と説明する。