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 清水建設は、繊維補強モルタル「ラクツム(LACTM)」で3Dプリントした型枠を、初めて構造部材である柱に採用した。従来工法では実現が難しいねじれた曲面を持つ柱4本を、3Dプリンターを活用して短期間で施工した。

「(仮称)豊洲六丁目4-2・3街区プロジェクト」交通広場の完成イメージ。中央の4本の柱を、ラクツムを3Dプリントした型枠で施工した(資料:清水建設)
「(仮称)豊洲六丁目4-2・3街区プロジェクト」交通広場の完成イメージ。中央の4本の柱を、ラクツムを3Dプリントした型枠で施工した(資料:清水建設)
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ラクツムを3Dプリントした型枠を用いて、ねじれた曲面を持つ柱を施工する様子(写真:清水建設)
ラクツムを3Dプリントした型枠を用いて、ねじれた曲面を持つ柱を施工する様子(写真:清水建設)
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 清水建設が開発したラクツムは3Dプリンター用モルタルで、埋設型枠をつくるのに適している。3Dプリンターで積層する際、固まる前に重ねても崩れることなく形状を維持できる。高さ2.1mの型枠なら約2時間で造形できる。硬化後、強度や靭(じん)性が高い点が特徴だ。

 ラクツムでつくった型枠を導入した建物は、清水建設が自社で開発、設計・施工している「(仮称)豊洲六丁目4-2・3街区プロジェクト」(東京・江東)だ。地上11階建てのオフィス棟と地上14階建てのホテル棟からなり、2棟の間に車寄せなどがある交通広場を設ける。この交通広場を覆うように2階レベルにかかる大規模なデッキを中央で支える4本の柱に、3Dプリンター用モルタルでつくった型枠を使った。

「(仮称)豊洲六丁目4-2・3街区プロジェクト」の1階平面図(左)と2階平面図(右)。交通広場の中央の柱に3Dプリンターで製造した型枠を使った。この柱から各建物側でブリッジを支える柱までのスパンは20mに及ぶ(資料:清水建設)
「(仮称)豊洲六丁目4-2・3街区プロジェクト」の1階平面図(左)と2階平面図(右)。交通広場の中央の柱に3Dプリンターで製造した型枠を使った。この柱から各建物側でブリッジを支える柱までのスパンは20mに及ぶ(資料:清水建設)
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施工中の「(仮称)豊洲六丁目4-2・3街区プロジェクト」。写真左がオフィス棟、右がホテル棟(写真:日経アーキテクチュア)
施工中の「(仮称)豊洲六丁目4-2・3街区プロジェクト」。写真左がオフィス棟、右がホテル棟(写真:日経アーキテクチュア)
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 柱は高さ4.2mで、底部の直径2.2m、頂部の直径2.7m。円状の底部から頂部に向かってねじれながら花びらのように広がっていく特殊な形状をしている。

3DCADデータを基に、3Dプリンターのロボットアームを制御するプログラムを作成。繊維補強モルタル「ラクツム(LACTM)」を3Dプリンターで積み上げて型枠をつくる様子(動画:清水建設)

 「上に向かって広がる形状の柱を従来の方法でつくるには、型枠の製作から施工まで時間やコストが多くかかる。効率的な方法はないかと検討していた。そのような折、2020年10月にラクツムが実用段階に入ったことを知り、技術研究所に相談して、すぐに導入を決めた」と、豊洲六丁目計画建設所で工事長を務める清水建設の森村隆二氏は導入の経緯を振り返る。

 3Dプリンターでつくった型枠を実際のプロジェクトに採用するのは今回が初めてだ。採用に当たって、清水建設技術研究所は3DCADデータを使って3Dプリンターのロボットアームを制御するプログラムを作成した。アームの可能範囲が限られているため製作できる型枠のサイズは長さ2m程度までに限られている。今回は、柱1本分の型枠を、水平方向に3分割、垂直方向に2分割し、6ピースに分けて製作した。

 この柱は、計画当初はこれほど複雑な曲面形状ではなかった。3Dプリントによる型枠を採用するに当たり、造形の自由度が高いという特徴を生かすため、より自由な曲面を持つ柱に設計を変更した。意匠設計の担当者が複数案つくり、作成可能な形に絞り込んだ。

 採用が決まってから約1カ月後の20年11月下旬に、型枠のプリントを開始した。「設計が終わってすぐ、つくり始められるのは3Dプリント技術の強みだ」と、ラクツムの開発者である清水建設技術研究所社会システム技術センターの小倉大季主任研究員は話す。

3Dプリンター用モルタル「ラクツム」を用いてつくった型枠で施工した柱(写真:日経アーキテクチュア)
3Dプリンター用モルタル「ラクツム」を用いてつくった型枠で施工した柱(写真:日経アーキテクチュア)
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