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 2050年のカーボンニュートラルに向けて、一気に潮目が変わりつつある。地球温暖化対策推進法改正案が閣議決定され、通常国会での成立が見込まれる。「2050年」という目標年次を法律で位置付けるという異例の改正である。自動車分野だけでなく、住宅分野でも新たな規制や支援策が議論され始めた。脱炭素による経済成長をかねて主張してきた小泉進次郎環境相は、「住宅業界なくして目標達成はできない」として、踏み込んだ規制の在り方にも言及した。5000字の単独インタビューをお届けする。(聞き手は島津 翔、菅原 由依子=日経クロステック)

「脱炭素」を経済の成長ドライバーとするためには何が必要でしょうか?

小泉進次郎環境相(以下、小泉) 脱炭素など環境関連の投資額は、世界で3000兆円ともいわれています。まずはっきりと申し上げます。世界は脱炭素市場と技術において大競争時代に入りました。これだけ世界中の投資家が同じ投資分野を見ている領域はありません。多くの人に、早くこの事実に気付いてほしい。

小泉進次郎 環境大臣
小泉進次郎 環境大臣
1981年生まれ。関東学院大学卒業後、米コロンビア大学にて政治学修士号を取得。米戦略国際問題研究所(CSIS)研究員を経て、2009年衆議院初当選。17年までに4回の当選を果たす。19年9月から現職。内閣府特命担当大臣(原子力防災)も兼務する。(写真=的野 弘路)
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 脱炭素は日本だけの現象ではありません。パリ協定の下、世界が同じ方向を見て、誰がその技術と市場を取るのかに注目が集まっています。いわば「取った者勝ち」の状況なんです。その動きを脇で見ているわけにはいきません。

 私が環境相に就いてから、⽯炭政策の⾒直しやカーボンニュートラルに向けた働きかけを繰り返してきたのは、⼈⼝減少の中で日本だけの“当たり前”を続け、世界のトレンドを理解しなければ、ガラパゴス化が進んでしまうという危機感があったからです。世界は先進国を中心に全く別の経済の形をつくり上げようとしています。2020年10⽉に菅義偉⾸相がカーボンニュートラル宣⾔をしていなければ、⽇本は主要7カ国(G7)の中で唯⼀、宣⾔をしていない国になるところでした。ガラパゴス化の道を、ぎりぎりで踏み⽌まったのです。

 50年までは残り30年ありますが、実際に成否を握るのはこの5年〜10年だと考えています。その期間にどんな技術が市場で実用化に到達するでしょうか。間に合うものはそれほど多くないはずです。ですから、私は2つのイノベーションが必要だと考えています。

 1つは技術のイノベーション。日本はものづくりやテクノロジーが大好きですし、得意でもある。ただしこれだけでは足りない。もう1つ、「ルールのイノベーション」が必要なんです。地球温暖化対策推進法の改正案もそうです。あらゆる法体系を変えていきます。

 カーボンプライシングもそうです。二酸化炭素の排出に価格がつき、早く脱炭素の方向に進んだ企業に負担が少なく利益が出やすい仕組みをつくりたい。カーボンプライシングの導入について環境省は以前から議論してきましたが、菅首相の下に梶山弘志経済産業相と私が呼ばれて、「両省で連携して議論を前進させるように」と指示を受けました。これは本当に大きな一歩です。

今、話題に出た「ルール作り」に関連して、3月2日に地球温暖化対策推進法の改正案が閣議決定されました。通常国会での成立が見込まれ、「2050年までの『脱炭素社会』の実現」などが法律で明記されることになります。カーボンニュートラルに向けた温対法改正の意義を教えてください。

小泉 改正の1つ目のポイントは、菅首相が宣言した「2050年カーボンニュートラル」に対して法的根拠を持たせること。法律に目標年限を明記するのは極めて異例のことです。

 狙いは、政策の継続性に対して信頼を⾼めることです。2050年カーボンニュートラルを閣議決定で留めるという選択肢もあり得ました。ただし、それでは菅内閣でなくなったらどうなるか分からない。それでは駄⽬なんです。「どの政権でもコミットする」という意味で、法律で担保する意義は⼤きい。

 金融の動きが脱炭素には非常に重要です。法律で政策継続性を担保することで、投資家に対して投資予見性を高める効果もあります。「日本は揺るぎない脱炭素への歩みを進める国だ」という予見があって初めて、「この国には投資する価値がある」という判断が引き出されるでしょう。

 脱炭素を実現する最⼤の鍵は、再⽣可能エネルギーの導⼊がどれだけ進むかにあります。温対法改正の2つ⽬のポイントは、⾃治体が再エネ事業の促進区域を設定するようにした点にあります。

 現在、一部の地域では環境への悪影響や防災の観点から、再エネ設備の整備に対する反対が起こっています。全国で100以上の⾃治体が再エネ設備の導入を規制する条例を制定している。再エネ促進をストップするようなこの流れに逆回転を起こしたい。促進区域の設定によって、再エネの規制ではなく促進へと転換したいと考えています。

 3つ目は情報開示の在り方を変えたこと。これまでは、企業に対する情報開示請求があって初めて情報が明らかになる流れでした。これからは企業の温暖化ガス排出量情報をデジタル化・オープン化していきます。もう開示請求は必要ありません。