政府は2021年3月19日、21年度から10年間の住宅政策の指針となる住生活基本計画を閣議決定した。脱炭素を巡る他の政策と足並みをそろえるように、住宅の省エネルギー対策について規制を強化する。内閣府からの要請で、国土交通省は3月に入って省エネに関する表現の見直しに追われた。修正前後の文面を比較することで、今後の規制強化の方向性が見えてくる。
「かなりドタバタしている」。国交省住宅局の幹部は3月上旬、日経クロステックにこう漏らしていた。菅義偉首相による「2050年カーボンニュートラル宣言」が、住宅政策にも色濃く影響してきたからだ。
おおむね5年ごとに実施している住生活基本計画の見直しに向けて、社会資本整備審議会住宅宅地分科会では1年半前から議論を進めてきた。計画案はほぼ固まり、国交省が表現を微修正した上で3月の閣議決定へと進む予定だった。
一方で内閣府は、2050年カーボンニュートラル実現のため、再生可能エネルギーなどの規制を網羅的に見直す総点検タスクフォースを20年12月に開始。21年2月24日の会議で、住宅の省エネルギー性能に関する規制を取り上げた。
国交省は、全ての住宅・建築物の省エネルギー基準適合義務化について「拙速な義務化は市場を混乱させる」として、慎重な判断が必要だと主張。すると、河野太郎行政改革担当相が「規制が国交省にできないなら環境省にやってもらう。できるかどうか早急に返事がほしい」とまくし立てた。議論は検討中の住生活基本計画にも及び、河野行革相は脱炭素に向けた施策の表現について、内閣府や環境省と再調整するよう国交省に指示した。
こうした流れを受け、赤羽一嘉国交相は3月10日の衆院国土交通委員会で、「(住宅に対する)省エネ基準への適合義務付けを含めた対策の強化について、ロードマップを新たに作成することが必要だという結論に至った」と明言。住生活基本計画にも「脱炭素に向けての具体的な文言を入れる方向で準備している」(前述の国交省住宅局幹部)としていた。
3月に入って新たに盛り込まれた内容を見てみよう。住生活基本計画で掲げた目標の1つである「脱炭素社会に向けた住宅循環システムの構築と良質な住宅ストックの形成」において、次ページの図のように修正が加えられた。