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 長野市に本社を構える工務店のミツヤジーホームは、水深3mの洪水が発生しても住み続けられる「耐水害住宅」を開発している。取り組み始めたきっかけは、2019年の台風19号で長野市内の住宅が深刻な浸水被害に遭ったことだ。

 同社は信州大学工学部建築学科の遠藤洋平助教と共同で、耐水害住宅に採用する開口部の止水性能を検証する実験を、21年3月16日に一般公開で開催。同社の安江高治会長は「実用化できる止水性能のレベルに達した」と実験を総括した。

2021年3月16日に信州大学工学部の構内で実施した公開実験の様子(写真:日経アーキテクチュア)
2021年3月16日に信州大学工学部の構内で実施した公開実験の様子(写真:日経アーキテクチュア)
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 耐水害住宅は1階が鉄筋コンクリート(RC)造で2階が木造の混構造を採用している。実験では、建物の屋内側を屋外に見立てた高さ3.5mの実験棟を用意した。RC造の躯体(くたい)に取り付けた開口部に止水対策を施し、屋内に水深3mまで水をためて開口部からの漏水の有無や量を確認する。遠藤助教は「建物の外側に浸水深3mの動かない“静水”がある状態と同じ水圧を再現できる」と説明する。

RC造の実験棟の開口部に止水対策を施し、実験棟内に深さ3mまで水を入れて開口部からの漏水の有無や量を調べた(写真:信州大学工学部遠藤洋平研究室)
RC造の実験棟の開口部に止水対策を施し、実験棟内に深さ3mまで水を入れて開口部からの漏水の有無や量を調べた(写真:信州大学工学部遠藤洋平研究室)
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 住宅が浸水すると水圧が作用し、部材の変形による隙間が生じて屋内に水が漏れ出す。部材が受ける水圧は受ける面積と水深に比例して大きくなる。耐水害住宅の開口部では、面積が広くて地盤面に近い玄関ドアが最も大きくなる。耐水害住宅に用いる面積が2.2m2の玄関ドアにかかる水深3mの水圧は2507kgf。中心部が地盤面から約1.9mの高さにあり面積が0.9m2の腰高窓は同じ水深で771kgfと、玄関ドアのほうが大きい。

水深が3mになると玄関ドアには2507kgfもの水圧がかかる(写真:日経アーキテクチュア)
水深が3mになると玄関ドアには2507kgfもの水圧がかかる(写真:日経アーキテクチュア)
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 既製の住宅用玄関ドアや窓ガラスはこれほど大きな水圧を想定していないので、枠や扉などが変形して隙間などから大量に漏水する恐れがある。耐水害住宅の開口部には既製品を使うので、ミツヤジーホームは様々な止水方法で効果を検証してきた。